| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-049  (Poster presentation)

捕食者水生昆虫との接触に伴う携帯巣トビケラ目幼虫3種の応答行動
Response behavior of Trichoptera larvae with portable cases to contact with predator aquatic insects.

*飯島稜輔, 河内香織(近畿大学)
*Ryosuke IIJIMA, Kaori KOCHI(Kindai Univ.)

トビケラ目は幼虫時を水中で過ごす水生昆虫であり、多くの種で携帯巣を持つことが知られている。携帯巣は捕食防御などの役割があるとされており、魚類の攻撃を受けた際に巣の中へ隠れ動かなくなることが知られている。しかし、無脊椎動物ではトンボ目において数例報告されるのみであり、トビケラ類の無脊椎動物捕食者への行動については解明されていないことが多い。本研究では異なる材料や形状の携帯巣を持つトビケラ目幼虫3種と捕食者水生昆虫の飼育観察を通して、捕食者にトビケラ目幼虫が接触したときの行動を明らかにすることを目的とした。トビケラ類はホタルトビケラ、カクツツトビケラ属、コバントビケラの3種を使用した。同所的に生息するトンボ目のオニヤンマ、ミルンヤンマ、カワトンボ属の3種及びヘビトンボ科を捕食者として実験に用いた。トビケラ類と捕食者を1個体ずつ水槽に投入し、ビデオカメラによる撮影を行った。捕食者との接触を、攻撃が確認されなかった「偶然接触」と確認された「攻撃」に区別し映像を解析した結果、 トビケラ類は偶然接触または攻撃の回数が増加するにつれて携帯巣の中へ隠れる時間が有意に減少していった。これはトビケラ類が捕食者との接触や攻撃に順化、または捕食者を脅威でないと学習した結果、巣に隠れる時間を減少させた可能性が考えられる。 3種ともに巣に隠れる行動をとったが、捕食者がヘビトンボの際にホタルトビケラで1度、コバントビケラで3度巣を捨てた逃避行動が見られた。コバントビケラは落葉片二枚のみで作製コストの低い携帯巣を持つことに加え、成長によって頻繁に携帯巣を新しく作り替えるため巣を捨てて逃避するほうが有意だと考えられた。


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