| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-068  (Poster presentation)

収穫に応答したタケノコの補償反応の大きさを決める環境要因の探索
Environmental factors determining the magnitude of compensatory response in edible bamboo in response to human-harvesting

*片山昇(小樽商科大学)
*Noboru KATAYAMA(Otaru University of Commerce)

安定した生態系では持続的に生態系サービスを利用できるが,自然の回復力を超えた撹乱が加わった場合,生態系サービスは急速に劣化する.一方で,中規模の撹乱が加わることで生態系サービスが向上する場合もある.したがって,生態系サービスを効率的に利用するには,「どのような状況」で「どのような」撹乱が加わった時に生態系サービスは向上するかという問いに科学的に答える必要がある.本研究は,北日本特産の山菜であるチシマザサのタケノコを対象として,山菜の生産性を決める環境要因の特定と人為的撹乱(収穫)の影響の解明を目的とした野外調査と野外実験を北海道大学・天塩研究林で実施した.
広範囲に渡って設置した野外プロットによる調査の結果,親ササの数と太さは生育地の傾斜角度に強く依存し, 急傾斜な場所ほど親ササは少なく太くなった.親ササの数と太さはタケノコの数と太さを決めるため,この結果は「平坦あるいは急傾斜な場所では価値の高い(ある程度太い)タケノコは減る」ことを意味する.次に,「収穫を受けたササの翌年のタケノコ生産」に及ぼす環境要因を探索するため,野外プロットの半数を収穫区としてタケノコを収穫(残りのプロットは対照区として維持)する実験を実施した.収穫区・対照区ともに,親ササの数とともにタケノコの生産は高まったが,対照区よりも収穫区の方がタケノコの生産は高かった.これは,前年の収穫に応答して補償反応が発現したためである.ここで,対照区における「親ササの数とタケノコ生産の回帰直線」は「補償反応がない場合のタケノコ生産の予測値」とみなせる.そこで,収穫区での各親ササの数におけるタケノコ生産数から対照区の回帰直線までの残差を計算し「補償反応の大きさ」を評価した. その結果,この大きさは急傾斜な場所ほど強い, つまり, チシマザサでは「収穫に応答した補償反応の大きさも生育地の傾斜角度に規定される」ことが示された.


日本生態学会