| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-070  (Poster presentation)

湿地環境が湿性植物の訪花昆虫群集に与える影響:広島県八幡湿地群34地点の比較から
Effects of wetland environment on pollinator community of wetland plants: a comparison of 34 sites in Yawata wetland community, Hiroshima Prefecture.

*渡津友博(浜田市立旭中学校, 広島大学), 丑丸敦史(神戸大学), 保坂哲朗(広島大学)
*Tomohiro WATAZU(Asahi Jr High., Hiroshima Univ.), USHIMARU ATSUSHI(Kobe Univ.), HOSAKA TETSURO(Hiroshima Univ.)

 多くの絶滅危惧種を含む湿地性植物の送粉過程については、送粉昆虫相など基本的な情報でさえ乏しい状況である。先行研究から、湿地の訪花昆虫群集において湿地性のハエ類が優占することが知られるが、森林性や草地性の訪花昆虫も確認されており、訪花昆虫群集は湿地内外の環境の影響を強く受けている可能性がある。この影響を明らかにすることは湿地生態系の保全を考える上でも重要である。そこで本研究では、広島県八幡湿地群34地点の訪花昆虫群集を比較することで、周辺植生や湿地面積などの湿地環境が訪花昆虫群集に与える影響を検証することを目的とした。
 2021年5~10月の日中に、34地点の湿地において各1~3本のトランセクト(1.5m×10m)を設置し、訪花昆虫の捕獲調査を行った。その結果、ハエ類が優占する湿地が最も多かったが(13地点)、ハチ類(8)や甲虫類(6)、アリ類(6)、チョウ類(1)が優占する湿地もあった。ハエ類の訪花頻度は二次林や農地草地に比べて人工林に囲まれた湿地において有意に低く、また湿地面積や開花数と正の相関があった。人工林は花が少ないため訪花性ハエ類の密度が低いことや、面積の小さい湿地は幼虫期を水中で過ごす湿地性のハエ類が減少することが要因であると考えられる。ハチ類の訪花頻度は、周辺植生の違いや湿地面積、開花数の影響は見られなかった。甲虫類の訪花頻度は湿地面積と負の相関があり、小さい湿地ほど多く見られた。また、ハエ類、ハチ類、甲虫類、アリ類のすべての分類群において、林縁から近いほど訪花頻度が有意に高まった。これは、湿地周辺の森林に生息する訪花昆虫が林縁近くの植物の重要な訪花昆虫であり、1つの湿地内でも林縁からの距離によって訪花昆虫の頻度や種が異なる可能性を示唆している。
 以上のように、湿地内外の環境によって湿地内の訪花昆虫群集が大きく異なることが明らかになった。湿地生態系の保全を考える上で周辺植生の影響も考慮する必要がある。


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