| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-074  (Poster presentation)

佐渡島及び弥彦山塊・米山におけるナンブアザミ節の形態的多様性とその地理的パターン
Morphological variety of sect. Onotrophe and its geographical patterns in Sado Island, Yahiko massif and Yoneyama.

*鈴木正樹, 指村奈穂子(日本自然環境専門学校)
*Masaki SUZUKI, Naoko SASHIMURA(Japan Nature & Ecology College)

 新潟県佐渡島にはナンブアザミ節に分類されるナンブアザミとサドアザミが分布する。しかし、両種の形態は連続的で、典型的な形態を持つ個体間には移行的な個体が存在する。 このような、佐渡島内の個体の形態的多様性を明らかにするには、多くの分類形質の計測を行い評価する必要がある。
 そこで、2022年にサンプリングした佐渡島45個体(大佐渡区域28個体、小佐渡区域17個体)と、対象区として調査した越後(弥彦山塊および米山)18個体の計63個体について、18形態を計測し要因とした後、各要因間の相関係数が0.75未満の要因を花・葉形質に分け、主成分分析(PCA)を行った。また、PCAで得られた各個体の第一主成分(PC1)と第二主成分(PC2)の得点をArcGISで地図化し、佐渡島と越後間の地理的パターンを検討した。
 その結果、 花形質のPCAでは、PC1の正の方向に総苞外片幅、総苞中片長、総苞中片幅、総苞広部幅、総苞長が寄与し、PC2の負の方向に総苞片角度、小花狭広比が寄与した。葉形質のPCAでは、PC1の負の方向に縦横比、裂度、刺長が寄与し、PC2の正の方向に葉身長が寄与した。また、佐渡島は越後より、花形質でPC1の正の方向に、葉形質でPC1の負の方向に序列化された。佐渡島の個体は、総苞片が長く幅があり、総苞は大型で幅があり、葉は大型で葉幅が広く深く切れ込み、刺が長い傾向がみられた。越後の個体は、総苞片が短く細く、総苞は小型で細長く、葉は小型で細長く、切れ込みが浅く刺が短い傾向がみられた。そして、花・葉形質の両方のPC1得点のとる値は、佐渡島では幅広かったのに対して、越後では小さい方の狭い範囲に収まっていた。
 今回の調査で佐渡島集団に生育する個体は越後集団と比較して、形態的多様性が高いことが明らかになった。今後、本州内陸部を含め、この形態変異を生み出すメカニズムについて明らかにしていきたい。


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