| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-085  (Poster presentation)

南アルプス亜高山帯植生の12年間の変化に及ぼすニホンジカの影響
Effects of sika deer on changes of vegetation for 12 years in a subalpne zone in Minami-Alps, central Japan

*長池卓男(山梨県森林研)
*Takuo NAGAIKE(Yamanashi For. Res. Inst.)

南アルプス北岳の亜高山帯において、ニホンジカによる植生への摂食の12年間の影響について定量的に評価した。調査は、標高2200~2800mまでの通称右俣および草すべりのダケカンバ林および高茎草原で実施した。登山道沿いの約30mおきに長さ20mの調査区を設定し(ダケカンバ林16調査区、高茎草原26調査区)、それぞれにおいて、登山道の両側に5m間隔で1×1mの植生調査区を設置した(1調査区あたり10植生調査区。合計420植生調査区)。各植生調査区に出現した植生高2m以下の維管束植物種を記録し、ニホンジカによる摂食の有無も記録した。この調査を2010年、2014年、2018年、2022年に実施した。全調査で出現した種は161種であった。被食率(各調査区における出現種それぞれの合計出現頻度に対する、被食されていた出現頻度の割合)は、ダケカンバ林では減少傾向が見られた。高茎草原では2018年まで減少傾向が見られたが2022年には増加していた。生活型別に見た出現頻度は、広葉草本の減少が顕著であり、それはダケカンバ林で高茎草原よりも顕著だった。Indicator Species Analysisを用いて、①各植生タイプでの2010年とそれ以後の調査における指標種、②各調査年で各植生タイプの指標種をそれぞれ明らかにした。①では、ダケカンバ林において、2010年が指標される種は2014年で5種、2018年で8種。2022年で11種と増加していた。高茎草原においては、2010年が指標される種は2014年で1種、2018年と2022年で5種であった。また、2022年を指標する種はオオバショリマとハンゴンソウであった。②において、2010年のみで指標種であったのは、ダケカンバ林でのサラシナショウマ、トモエシオガマ、タケシマラン、ハクサンイチゲであった。また、2022年のみで指標種であったのはダケカンバ林でのミヤマアキノキリンソウ、ソバナであり、2018および2022年でのみ指標種であったのは、高茎草原でのハンゴンソウであった。


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