| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-086  (Poster presentation)

日中および夜間の温暖化がモンゴル草原の植生および生産性に与える影響
Effects of daytime and nighttime warming on grassland vegetation and productivity in the Mongolian steppe

*衣笠利彦(鳥取大), 吉原佑(三重大), 佐々木雄大(横浜国立大), 寺本宗正(鳥取大), Gantsetseg BATDELGER(IRIMHE)
*Toshihiko KINUGASA(Tottori Univ.), Yu YOSHIHARA(Mie Univ.), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.), Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Gantsetseg BATDELGER(IRIMHE)

日中および夜間の温暖化が乾燥草原の植物生産に与える影響を解明することを目的に、モンゴル国中央部の草原地帯において2018年から4年間の野外操作実験を行った。無処理の対照区に加え、オープントップチャンバー(OTC)設置によって日中気温を上昇させた条件、およびOTC内にヒーターを設置して夜間気温も上昇させた条件を設定した。実験期間中を通し、OTCによる日中気温の上昇は約2℃、ヒーターによる夜間気温の上昇は約1.2℃であった。温暖化処理によって植生の多様度指数に大きな変化はみられなかったが、植物被度および地上部バイオマス量が減少した。ヒーターの効果は小さかったものの、おおむね植物量を低下させる傾向がみられた。温暖化処理による植物量の減少は、主に一年草の植物量低下によるものであった。一年草の植物量の大部分はChenopodium acuminatumSalsola collinaの2種で占められており、それらの植物量の減少は個体サイズの低下と個体数の減少の組み合わせによるものであった。5cm深の土壌含水率はOTCにより低下し、ヒーターによってさらに低下していた。以上の結果から、温暖化は土壌乾燥を促進し、主に一年草の出現や成長を抑制することで、モンゴル草原の植物生産量の低下をもたらす可能性が示された。夜間の温暖化は土壌乾燥を加速し、草原生産量の低下を促進すると予想される。


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