| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-096  (Poster presentation)

都市景観の不均質性に着目した都市における植物進化の促進・制限機構の解明
Urban environments regulating plant trait evolution: a perspective from urban spatial heterogeneity

*石黒智基(北海道大学環境科学院), 内海俊介(北海道大学FSC)
*Tomoki ISHIGURO(Env. Science, Hokkaido Univ.), Shunsuke UTSUMI(FSC, Hokkaido Univ.)

近年、都市化が生物の進化に及ぼす影響について新たに注目が集まっているが、都市環境の進化的影響の実態については、まだ多くのことが明らかでない。これには主に以下の理由がある。1) 多くの環境要素が都市勾配に沿って変化する一方で、その変動様式は非線形的・不連続的である。しかし、 これまでの研究では二分的な比較(都市vs郊外)やトランセクト調査による研究アプローチ (従来アプローチ) が主流である。そのため、都市化のどの要素が進化を駆動するのか不明である。2) 従来アプローチが複数都市で展開され、都市によって進化応答が異なることが報告されてきている。しかし、都市によって進化パターンに違いが生じるメカニズムは分かっていない。マクロな気候の違いとミクロな都市構造の違いの相互作用の影響が考慮されていないことがその原因である可能性がある。したがって、都市進化の理解を深めるためには、都市の不均質な景観構造の影響を明らかにし、それを複数の都市間で比較することが必要である。

本研究では、シロツメクサの被食防衛形質であるシアン産生能に着目し、都市から郊外までのその変異の詳細な空間分布を明らかにした上で、さらに景観構造や気候条件の異なる複数の都市で変異の空間分布を比較することによって、都市化による環境変異がシアン産生能の進化に与える影響を解明することを目的とした。

都市中心から郊外農耕地帯を含む札幌市近郊の122地点、函館市近郊40地点、旭川市近郊41地点、釧路市近郊31地点で定量採取したシロツメクサを用い、都市から郊外までのシアン産生能および構成因子の有無の空間変異を調べた。主に被食圧によってシアン産生能の集団内頻度が変化することがわかった。また、人工地表面率がシアン配糖体生成の集団内頻度に影響していた。本発表ではこれらの調査に関する結果について報告し、議論したい。


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