| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-101  (Poster presentation)

くじゅう地域の春季から初夏における半自然草原および湿生草原の群落の組成と構造
Composition and structure of semi-natural grasslands and wet grasslands from spring to early summer in the Kuju Area

*大窪久美子, 本間政人, 田島尚(信州大学農学部)
*Kumiko OKUBO, Masato HONMA, Hisashi TAJIMA(Shinshu Univ.)

生物多様性保全を図る上でも、特に草原性草本種の減少や絶滅が課題となっている。大規模な草原が分布する阿蘇くじゅう国立公園「くじゅう地域」においても半自然草原植生の減少や変質が懸念されているが、現状は明らかではない。そのため発表者らは半自然草原群落の組成と構造、種多様性と立地環境および植生管理条件との関係を解明し、保全策を検討すべく、2020年~2021年に本地域で群落調査を実施し、群落特性や多様性が高い群落型の成立要因について議論した(大窪ほか 2021、2022a、Okubo 2022b)。しかしながら、草原群落では季節的な植物種の棲み分けが知られており、群落の特性や多様性を議論するためには、多様な調査時期のデータを検討する必要がある。そこで本研究では春季から初夏における半自然草原および湿生草原の群落の組成と構造について明らかにすることを目的とした。また、本研究は草原生態系の基盤となる群落の生物多様性や環境評価を簡易に行うための新規手法を開発するための基礎的データを収集することも目的としている。
植生および立地環境調査は2地区(K・Y)において半自然草原および湿生草原、森林の計16地点を設定し、既報で使用した調査もあわせて、2020年8月から2022年9月に実施された。春季から初夏は主に4月から5月下旬の調査データである。次に半自然草原の管理履歴や希少植物種の分布等に関する聞き取り調査は関係団体の代表者に対面方式で2019年から2022年に実施された。本地域では現在も野焼きや輪地切等の慣行的管理が実施されている地点があり、調査地に選抜した。
春季から初夏において最も多様な群落はサクラソウやサワオグルマなどが出現した湿生草原であった。また、ネザサやススキの優占する半自然草原では、キスミレやアマドコロなどの出現が特徴的であった。特にキスミレは、野焼きが実施されているが、植生遷移が進行した群落型で出現した。


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