| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-132  (Poster presentation)

樹形の遺伝的変異が成長と個体間競争に及ぼす影響:クリを使った密度操作実験【B】【E】
Influences of genetic variations in tree architecture on growth and competition among clonal individuals in Castanea crenata【B】【E】

*小野田雄介(京都大学), 三浦真弘(森林総研・林木育種セ), 岩泉正和(森林総研・林木育種セ), 山田浩雄(森林総研・林木育種セ)
*Yusuke ONODA(Kyoto University), Masahiro MIURA(FFPRI-FTBC), Masakazu IWAIZUMI(FFPRI-FTBC), Hiroo YAMADA(FFPRI-FTBC)

広葉樹は針葉樹に比べて、一般的に、材は固く、樹冠幅が広く、光競争に強い。光競争に強い特性は、個体間競争では有利であるが、集団(森林)の生産性には寄与しない可能性がある(コモンズの悲劇)。本研究の目的は、林業的な価値がある広葉樹クリの複数の遺伝型を用いて、競争力と個体・集団生産力の間にどのような関係があるのかを検証するものである。我々の先行研究により、林木育種センター関西育種場が収集・育成した15年生のクリ8系統には、樹形の大きな遺伝的な変異があり、また接木で増殖した苗においても親木と同様の樹形の違いを認めている。本研究では、これら8系統の2年目の接木苗を18Lポットに植え、ポットの配置を変えることにより、各系統ごとに低密度と高密度区を設定し、樹形の遺伝的変異と成長の密度依存性の関係を検証した。低密度区と高密度区では、樹形に大きな違いが生じ、高密度区のほうが樹高が高く、横枝数は減った。密度が異なっても、主軸の優勢度合いや横枝本数においては、系統間のランクは保たれる傾向があるが、高さ成長や茎直径成長は系統間のランクが変わり、系統によって密度応答に差があることが示唆された。発表では、樹形と密度効果の影響について、より詳細な解析結果を報告する予定である。


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