| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-141  (Poster presentation)

平地田の広がる水田景観での耕作放棄地増加に対する農地性鳥類の反応【B】
Responses by farmland birds to increasing abandoned fields in paddy-dominated landscapes【B】

*藤田剛(東京大学)
*Go FUJITA(University of Tokyo)

耕作放棄地の増加は、日本に限らず欧米などを中心に世界に広く見られ、生物多様性にどのような影響をおよぼすのか不明な点が多い。

こうした放棄地増加と生物多様性の関係を景観スケールで明らかにすることは、生息地の空間的異質性や生息地分断・縮小の影響を理解する上で重要な意味をもつと考えられる。景観スケールでの耕作放棄の影響をしらべる対象として、複数の景観要素を利用する鳥を対象とした研究が進んでいる。

日本では、農地の割合が中程度(約50%)のときに種数が最大になること(Sasaki et al. 2020)、農地の中での放棄地割合が中程度(約50-70%)の場合に鳥全体の生息可能性が最大になることが示されているが(Katayama et al. 2021)、こうした一山型の関係が生じる機構は不明のままである。

本研究では、生物多様性に対する放棄地増加の影響を理解するため、農業活動が国内でも比較的活発で、かつ放棄地も増えつづけている岩手県中部の農地を対象に、鳥と放棄地の関係をしらべている。

調査は、北上盆地から北上山地山麓までの10x25kmの範囲で、放棄地の割合がもっとも高い場所から低い場所を含む31か所で行なった。それぞれに鳥を記録する500mのコースを置き、繁殖期から秋の渡り時期にあたる2022年5月から11月までの6か月間、月に1回の頻度で鳥を記録した。耕作放棄地とその種類、水田や畑、放棄地以外の草地や湿地、および森林の植生などの調査は、農地の種類や植生の差異が把握しやすい2022年9月を中心に、それ以外の時期にも随時行なった。

以上のデータを元に、今回はまず、鳥と放棄地や農地、森との関係を解析した結果を報告する。


日本生態学会