| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

景観と気象条件が両生類の舗装道路への出現に与える影響
Effects of landscape and weather conditions on amphibian occurrence on paved roads

*相川詠紀, 斎藤昌幸(山形大学)
*Eiki AIKAWA, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

両生類はロードキルによる負の影響を強く受けていることが指摘されている。先行研究では死体の情報によってロードキルリスクを解析しているものが多いが、死体は交通量やスカベンジングの影響を受けるため、過小評価につながる可能性がある。死体だけでなく、生きた個体(生体)の路上への出現にも着目することで、このような問題を回避できると考えられる。本研究では、景観・気象条件と両生類の生死体の舗装道路への出現との関係を明らかにすることを目的とした。
 山形県庄内地方において、2022年7月から10月にかけてルートセンサスを行った。森林景観から水田景観を含むルートで、舗装道路上に出現する両生類を探索した。観察された死体および生体について、半径100 mから1500 mのバッファ内の周辺景観(水田・住宅地・針葉樹林・広葉樹林・林縁の割合)と気象条件(気温・湿度・降水量)との関係を一般化線形モデル(GLM)で解析した。
 ルートセンサスの結果、合計68 kmの路上で11種221匹の両生類生体を、合計112 kmの路上で10種189匹の両生類死体を発見した。GLMの結果、重要と考えられる空間スケールは種ごとに異なっており、解析をしたトノサマガエル生死体、タゴガエル生体、アカハライモリ死体について、それぞれ半径100 m、100 m、200 m、1200 mであった。これらから、重要な空間スケールの違いは種特性によって異なることが示唆された。生死体共に解析をしたトノサマガエルでは、生死体ともに気温が高い条件で周辺に水田が多いような景観の路上に出現しやすかった。一方で、林縁割合による有意な影響は死体にのみ現れ、生体と死体が路上に出現しやすい条件は一部異なっていた。このことから、潜在的なロードキルリスクを明らかにするためには、死体だけでなく、生体についても着目することが重要であることが示唆された。


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