| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-147  (Poster presentation)

地域知・採集記録・環境DNAから考える石川県能登半島における淡水魚類相の分布変遷
Changes in freshwater ichthyofauna in Noto Peninsula, Ishikawa according to local knowledge, past fish surveys, and environmental DNA

*荒川裕亮(のと海洋ふれあい), 江口健斗(石川県立大学), 郡司未佳(日本工営株式会社), 今村史子(日本工営株式会社), 上野裕介(石川県立大学)
*Hiroaki ARAKAWA(Noto Marine Center), Kento EGUCHI(Ishikawa Prefectural Univ.), Mika GUNJI(Nippon Koei Co., Ltd.), Fumiko IMAMURA(Nippon Koei Co., Ltd.), Yusuke UENO(Ishikawa Prefectural Univ.)

 淡水域における生物多様性は高度経済成長期以降の河川改修や放流など人為的活動により低下している.今後の水辺の自然再生に向けて,河川改修以前や現在における生物の分布状況を整理し,生物相の変化や分布変遷を評価する必要がある.近年,環境DNAを用いた淡水魚類調査が行われている.一方で,過去の分布情報は限られているが,住民が有する地域知は科学的調査の代替的情報源として,生物の分布状況の評価に用いられている.そこで,本研究は時間軸の異なる3つの情報源より,石川県能登半島における淡水魚類の分布変遷を評価することを目的とし,①地域知の聞き取り調査(高齢者の幼少期における経験),②採集記録の文献調査(1970年代~2000年代),③環境DNAによる魚類調査(2022年秋)を実施した.
 本研究は石川県能登半島の町野川(流路長21km)を対象とした.①聞き取り調査として,町野川流域の住民51名(50~95歳)に対して,生息が確認されている魚種についてアンケート調査を実施した.②文献調査として,3年代(1970年代,1990年代,2000年代)に実施された淡水魚類の調査報告を取りまとめた.③環境DNAによる魚類調査は,町野川の17地点において河川水1Lを採水し,MiFish を用いたメタバーコーディング法による網羅的解析を実施した.
 結果として,聞き取り調査より30種,文献調査より37種,環境DNA調査より31種が記録された.文献調査で参照した魚類調査では,形態に基づく同定がなされており,他の調査結果と比べて種数が多かった.聞き取り調査より,通し回遊魚(アユなど)や平地性魚類(キタノメダカなど)は,他の調査結果と比べて広域的に分布していたことが示された.環境DNA調査より,これまでに記録のないキタドジョウや,移入種と考えられるヒガイ属などが検出された.地域知や環境DNAによって得られた分布情報は,既存の採集記録と合わせて河川改修や放流による影響の評価に有益であり,結果の詳細は発表にて紹介する.


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