| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-148  (Poster presentation)

狭山丘陵の谷津田・里山環境におけるカエル類の生息地利用について【E】
Habitat use of anuran species at Satoyama in Sayama-kyuryo【E】

*内藤梨沙, 市原梨香, 平塚基志(早稲田大学)
*Risa NAITO, Riko ICHIHARA, Motoshi HIRATSUKA(Waseda Univ.)

谷津田は周囲を取り囲む斜面林やため池との連続性の高さから、多様な湿地性生物が生息し、豊かな水田生態系が成立してきた。しかし、平野に広がる水田に比べて谷津田は面積が小さく湿田であることが多いため、管理の難しさ等の理由から、耕作放棄や開発が行われ全国的に面積が減少している。その一方で、生物多様性保全の観点から谷津田とその周辺の二次林やため池等を含む里山環境の保全や再生、適切な管理方法への関心が高まっている。本研究では、埼玉県と東京都の都県境に位置する狭山丘陵北部の再生された谷津田とその周辺のため池において、水田生態系を代表する生物としてカエル類に注目し、各種カエルの谷津田・里山環境おける生息状況や各種カエルの幼生の成長と環境要因の関係を明らかにすることを目的とした。稲作が行われている水田、放棄1年目の水田、放棄4年目の水田、そしてため池の4つのカテゴリーについてそれぞれ3か所ずつ調査地とし、2021年12月16日から2022年9月13日まで約1週間に1度の頻度でラインセンサス調査を行い、カエル類の鳴き声、卵塊、幼生の有無を記録した。幼生が確認された際は各種類の幼生10個体以上を目標として掬い取りを行い、種と頭胴長を記録した。また環境要因として、各調査地の面積を測定し、水質(全窒素、全リン、溶存酸素量)と積算日射量の測定、植生調査を季節ごとに行い、水温と水深はロガーを用いて30分に1度記録した。各種カエルの鳴き声の有無と環境要因の関係については一般化線形モデル、各種カエルの幼生の成長と環境要因の関係については加法モデルを作成して解析を行い、各種カエルの生息地利用と幼生の成長と、環境要因との関係を明らかにした。それらの結果から、カエルの種多様性の保全には、画一的な管理を行うより、異なる水辺環境や光環境が存在するような谷津田・里山環境を維持、再生することが望ましいことが示唆された。


日本生態学会