| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-153  (Poster presentation)

サクラミミズの団粒形成速度は季節に関係無く一定
Soil aggregate production rate by earthworm Eisenia japonica is constant regardless of season

*金田哲(農研機構 西農研)
*Satoshi KANEDA(WARC/NARO)

 ミミズは土壌肥沃度に影響する団粒を形成する。これまでに土壌温度、水分やミミズ重量が土壌生息性のサクラミミズによる団粒形成速度に及ぼす影響を評価してきた。しかしミミズを採取する時期は考慮していなかった。Kretzschmar(1991)は、Aporrectodea longaを採取した時期の環境条件でミミズの活動が変わり温度水分が一定条件の室内実験でも時間経過とともに表層に排泄する糞の量が変化する可能性を指摘している。採取した時期の環境条件でミミズの活動と共に団粒形成量が変われば、採取した時期の統一や時期を考慮する必要がある。そこで本研究では実験で用いているサクラミミズが採取した季節により団粒形成量が変わるかどうかを検討した。
 サクラミミズは秋田県果樹試験場で4月、7月、10月に採取した。秋田においてこれらの季節は、4月は雪解け後、7月は夏の高温乾燥時、10月は湿潤で適温となり、これらの時期はミミズの活動に影響を及ぼすと考えた。土は沖積土を用い、1mm以下にふるった。土壌水分は最大容水量の60%に調整し、実験温度15℃で1週間培養した。ミミズを回収後、土を乾燥させた。篩は1.6mmを用い、篩に残った団粒をミミズが形成した団粒とした。篩に残った土を60℃で乾燥後、重量を調べた。ミミズ重量と団粒形成速度の関係は、べき乗の式で近似した。季節の影響は、モデル選択により評価した。モデル 1 は、 全ての季節の結果を1つのべき乗の式で表現したモデル。 モデル 2 は、 季節毎に個別の式で表現したモデル。これら2つのモデルを赤池情報基準(AIC)で比較するとともに、危険率5%で統計的に有意にモデルが異なるかを評価した。その結果、AIC の値はモデル2>モデル 1となったが、2つのモデルは有意な差が無かった(p=0.56)。以上の結果よりサクラミミズについては採取した時期により団粒形成速度に違いがあるとは言えず、研究の簡略化の観点からミミズ重量と団粒形成速度はいつ採取しても一定と仮定しても良いと考えた。


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