| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-158  (Poster presentation)

マツ枯れによる大規模な枯死木の発生が地域スケールの炭素循環に与える影響
Impacts of mass tree mortality caused by pine wilt disease on the regional carbon cycle

*平田晶子(森林総研), 小南裕志(森林総研), 深山貴文(森林総研), 高梨聡(森林総研関西)
*Akiko HIRATA(FFPRI), Yuji KOMINAMI(FFPRI), Takafumi MIYAMA(FFPRI), Satoru TAKANASHI(FFPRI Kansai)

近年、気候変動や人間活動が森林病虫害の拡大をもたらすことで、大規模な樹木枯死が世界各地で深刻化しており、森林の炭素固定能力の低下が危惧されている。例えば日本では、北米から持ち込まれたマツノザイセンチュウが引き起こすマツ材線虫病 (マツ枯れ) が、北海道を除くすべての都府県に拡大し、マツの大量枯死を引き起こしてきた。このような病虫害による大規模な樹木枯死は、樹木の光合成によるCO2吸収量を低下させるだけでなく、枯死木の分解にともなう大量のCO2放出を引き起こし、森林を一時的なCO2放出源へ変えてしまう可能性がある。そこで本研究では、現時点ではマツ枯れ被害が確認されていない富士山麓のアカマツ林を対象に、マツ枯れ被害が広がった場合に発生しうる枯死木の分解が、地域スケールの炭素収支に与える影響を評価することを目的とした。
山梨県富士山研所内のアカマツ林に、枯死年代、条件の異なるアカマツの丸太を5本ずつ設置し、定期的にCO2発生量と温度や含水量などの環境条件の測定を行った。さらに、これらの観測結果を用いて、枯死木材の分解を他の有機物の分解と区別して評価可能な土壌炭素モデル(Yassoモデル)のパラメータ調整を行うことで、調査対象地の枯死木分解過程を評価可能な炭素循環モデルを構築した。構築したモデルに、調査地域にマツ枯れが広がった場合に発生しうる枯死木量をインプットとして与えることで、マツ枯れの拡大に伴うCO2放出量を地域スケールで評価した。本発表では、これらの結果をもとに、マツ枯れ枯死木の発生が地域スケールの炭素収支に与える影響について議論する。


日本生態学会