| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-159  (Poster presentation)

樹木の枯死根特性と枯死判定との関係【E】
Relathionship between decision of root mortality and the traits of dead roots【E】

*大橋瑞江(兵庫県立大学), 中路達郎(北海道大学), 牧田直樹(信州大学), 野口享太郎(森林総合研究所), 福澤加里部(北海道大学), 檀浦正子(京都大学), 平野恭弘(名古屋大学)
*Mizue OHASHI(Univeristy of Hyogo), Tatsuro NAKAJI(Hokkaido Univeristy), Naoki MAKITA(Shinshu Univeristy), Kyotaro NOGUTHI(FFPRI), Karibu FUKUZAWA(Hokkaido Univeristy), Masako DANNOURA(Kyoto University), Yasuhiro HIRANO(Nagoya University)

森林生態系における細根動態の研究において、枯死根の分類は未だ多くの不確実性を孕み、データの信頼性や精度を引き下げる一因となっている。そこで本研究では、(1) 枯根判定の不確実性、(2) 枯根判定基準における優先順位、(3) 細根性状と枯根判定との関係、(4)樹種が枯根判定に及ぼす影響、の4つを明らかにすることを目的として実験を行った。実験は、北日本のカラマツ林とヒノキ林で採取した細根サンプルを対象に行った。まず14 名の判定者が採取した根の生死を目視と触感で判断した。さらに判断基準とその優先度を尋ねるアンケート調査を実施した。次に採取根について、形態分析、養分分析、スペクトル画像分析を行った。その結果、判定者間で枯死根の判定には大きなばらつきがあることが明らかとなった。さらに多くの判定は、色情報を最優先に行われており、2 番目に優先される判定基準は判定者間でばらついていることが明らかとなった。枯死根の形態、養分状態、分光特性と判定結果との関係は、二つの樹種で異なり、その理由として、根の枯死プロセスが種特異的である可能性が考えられた。本研究の結果より、野外調査で採取した根を、精度よく生きた根と枯死した根に選別するためには、種ごとに枯死プロセスを考慮した枯死根の判定基準を確立する必要があることが示唆された。


日本生態学会