| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167  (Poster presentation)

林床を掘り返すニホンイノシシによる土壌有機物の損失に対する土壌動物の機能の検証
A test of the functions of soil macrofauna on soil organic matter loss caused by wild boar rooting

*豊田鮎(香川大学), 長谷川元洋(同志社大学), 原口岳(大阪環農水研・多様性), 佐藤重穂(森林総研)
*Ayu TOYOTA(Kagawa Univ.), Motohiro HASEGAWA(Doshisha Univ.), Takashi F HARAGUCHI(RIEAFO, Biodiv.), Shigeho SATO(FFPRI)

ニホンイノシシ、ニホンアナグマは土壌に生息する貧毛類などの動物を採餌する際に土壌を掘り返す。採餌によって、直接、土壌動物を減少させることに加え、ニホンイノシシ、ニホンアナグマによる林床の探索行動は、リター層と土壌層の攪拌を伴う結果、餌ではない体サイズが数㎜の小さな土壌動物の生息環境を変化させると予想される。本研究では、この探索行動、土壌動物群集の多様性と土壌の炭素貯留機能の関係にアプローチするため、リター層と土壌層の攪拌、土壌動物の豊富さが土壌有機物の損失と貯留をどのように変化させるかを明らかにすることを目的とし、野外操作実験を行った。哺乳類による掘り返しを排除するため、林床面積40㎝×38㎝を覆う網目4.5㎝四方の網カゴを斜面に沿ったライン上に10地点、10m以上の間隔で設置し(排除区)、排除区に隣接する2m四方の林床において各地点で掘り返しの有無を調査した。ニホンイノシシまたはニホンアナグマによる土壌の掘り返しの影響を評価するため、排除区の設置から2年間に掘り返しが観測された林床を対照区として10地点を各排除区から水平距離で2m以内に設定した。排除区設置から27ヶ月後、排除区、対照区の林床面積10㎝×10㎝、リター層を含む深さ9㎝の土壌を非破壊で、それぞれ2つずつ採取した。10㎝×10㎝×9㎝のプラスチック製容器の蓋、側面と底に片方は5㎜メッシュ、もう一方を0.1㎜メッシュのナイロンを用いた開口部を作成して移出入できる土壌動物の体サイズを操作した容器に各区で採取した土壌とリターを入れ、元の林床に戻すように埋設した。埋設から約2年後に測定した土壌炭素量は、地点を変量効果としたGLMM解析の結果、排除の有無、移出入が可能な土壌動物の大きさを制御するための処理の両方で説明された。0.1㎜メッシュの系と比較し、体幅0.1㎜~5㎜の土壌動物も移出入が可能な5㎜メッシュの系は土壌に炭素が貯留され、有機物の損失が少ないことが示された。


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