| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-175  (Poster presentation)

ディープラーニングを用いた水田生物群集のモニタリング手法の検討
Examination of a biodiversity monitoring in paddy fields using deep learning techniques

*平岩将良(近畿大・農), 石若直人(近畿大・農), 秋山大樹(近畿大・農), 太田貴生斗(近畿大・農), 橋本洸哉(弘前大・農生, 国立環境研究所), 土屋健司(国立環境研究所), 角谷拓(国立環境研究所), 早坂大亮(近畿大・農)
*Masayoshi HIRAIWA(Kindai Univ.), Naoto ISHIWAKA(Kindai Univ.), Daiki AKIYAMA(Kindai Univ.), Kioto OTA(Kindai Univ.), Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ., NIES), Kenji TSUCHIYA(NIES), Taku KADOYA(NIES), Daisuke HAYASAKA(Kindai Univ.)

水田生態系は,水域・陸域環境の移行帯で,生物多様性の高い群集が成立する系のひとつである.しかし,農業の集約化や耕作放棄,気候変動等により,生物多様性の減少が危惧されている.生物多様性の減少を防ぐためには,生物のモニタリングを継続的におこない,生態系に生じた異常を早期発見して保全策を講じることが重要である.一方で,水田の生物群集は水域・陸域の生物を含む多様な分類群の種から構成されるため,広範な生物に対する高い同定能力が要求されるという課題がある.また,モニタリングには生物種の在/不在だけでなく,変化に対する感度が高い生物の個体数の情報も非常に重要であるが,個体数情報の取得は在/不在情報以上に多大な労力を必要とする.さらに,進行する温暖化などの気候変動は生物の季節性にも影響を与えることが懸念されるが,季節性への影響評価には高頻度のモニタリングが必要であり,調査労力の削減は喫緊の課題である.近年,ディープラーニングによる物体検出技術が発展し,画像中の生物の種同定手法の開発も進みつつある.本技術をモニタリングに活用することで,調査者の種同定能力に依存せず,かつ自動計数が可能になり,労力の大幅な削減が期待できる.そこで本研究では,ディープラーニングを用いた水田生物群集のモニタリング手法の開発を試みた.
近畿大学農学部の実験圃場に水田メソコスム(人工生態系)を16基設置し,2022年6月から10月にかけ,週1回の頻度で生物調査を実施した.調査では,稚魚ネットに入った生物をバットに移し,写真を撮影した.写真の一部を学習データとし,ディープラーニングを用いて水生昆虫や貝類などの物体検出をおこない,メソコスム内の各種の個体数を計数した.目視とディープラーニングによる検出個体数を比較した結果,高い相関を示し,水田生物群集のモニタリングに対してディープラーニングが有用である可能性が示された.


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