| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-176  (Poster presentation)

配列情報を用いた簡便で汎用的な分類群推定方法
Easy and generic taxonomy assignment method using sequence infomation

*西野貴騎(京都大学)
*Takanori NISHINO(Kyoto Univ.)

 次世代シーケンサーによる解析が発達した近年では、Amplicon-seq などの手法で、サンプル中の生物相を丸ごと反映した大規模なシーケンスデータを得ることができるようになった。得られたシーケンスデータがどの生物に由来するか同定する方法はいくつか開発されてきたが、あらゆる配列領域に適応できる高速かつ高精度の同定手法の開発は今なお一つの課題である。
 今回、発表者は BLAST 検索をベースとして、(1)あらゆる配列領域に適応可能で、(2)データベースを自作・編集可能な、(3)高速・高精度の同定手法、SOHRD 法を開発した。SOHRD 法は、以下の仮定をおくことにより、BLAST 検索の結果を統計的に処理して query 配列の同定を行う手法である。すなわち、(a) 各分類階級において、共通祖先までの進化的距離は概ね一定とする (b) 各分類群間の進化的距離の分布は等しいものとして (c) 分散は共通祖先までの進化的距離に比例するとみなす、という仮定である。手順としては、はじめに BLAST の検索結果をもとに、ある配列データから別種までの進化的距離、別属までの進化的距離、別科までの進化的距離、…と、予測する。続いて、BLAST 検索の上位結果が別分類階級までの進化的距離よりも優位に近ければその BLAST 検索の結果とquery 配列が同じ分類群であるものとして同定を行う。
 本研究では、BLAST 検索の結果として得られる percent identification を 100 から引いたものがそのまま進化的距離であると見なして、SOHRD 法による生物同定手法をプログラムとして実装した。さらに原核生物16S領域、ITS領域、COI領域において、従来の同定方法である DADA2 や 5nn 法と同定精度を比較した。その結果、SOHRD 法は従来法と同等以上の同定精度を発揮する可能性が示された。


日本生態学会