| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-184  (Poster presentation)

協力するための資源が時々ないときの信頼の進化
Evolution of trustfulness in the case where resources for cooperation are sometimes absent

*黒川瞬(北陸先端大)
*Shun KUROKAWA(JAIST)

行為者にとってコストがかかり、被行為者にとってベネフィットがある協力はなぜ進化しえたのか。協力が行為者にとってコストのかかる行動であることを考えると不思議である。協力の進化を促進するメカニズムはこれまでいくつか提示されてきたが、その内の一つに相手が協力者か非協力者かに応じて、関係を続けるか関係を打ち切るかを決めるメカニズムがある。もしプレイヤーが非協力者との関係を打ち切ったら、非協力者は協力者に関係を打ち切られてしまう一方で、協力者は協力者に関係を打ち切られない。このように、協力者は非協力者が享受できない利益を享受できるため、協力は進化しうる。協力するためには、時間や食べ物といった資源が必要であるが、その資源はいつもあるわけではない。また、相手が資源を有しているか否かに関する情報は手に入るとする。この場合、相手の状況は3通りある。1つ目の状況は、相手には資源があり、協力をした場合である。この場合、相手は協力者であることが状況から読み取れる。2つ目の状況は、相手には資源があり、非協力をした場合である。この場合、資源があるにも関わらず非協力をしたわけだから、相手は非協力者であることが状況から読み取れる。3つ目の状況は、資源がなく、かつ、非協力者をした場合である。この場合、相手は、もちろん非協力者であるかもしれないが、資源がなかったから非協力せざるをえなかっただけで、本来的には協力的な個体なのかもしれない。したがって、このような個体と関係を続けるような信頼する行動が適応的なのか、あるいは、関係を打ち切るような信頼しない行動が適応的なのかは明らかではない。本研究では、進化ゲーム理論を用いて、信頼する協力者、信頼しない協力者、信頼する非協力者、信頼しない非協力者の4戦略ゲームの解析を行った。その結果、資源がなくて非協力者をした個体とは関係を続ける行動が進化しやすいことを明らかにした。


日本生態学会