| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-196  (Poster presentation)

日本産キリギリス亜目昆虫の地理的分化
Geographical differentiation of Japanese Ensifera species

*高嶋あやか, 里村和浩, 斉藤勝和, 小倉淳(長浜バイオ大学)
*Ayaka U. TAKASHIMA, Kazuhiro SATOMURA, Masakazu SAITO, Atsushi OGURA(Nagahama Inst. BioSci. & Tech.)

キリギリス亜目を含む直翅目は、不完全変態昆虫で最も種数の多い分類群であり、体サイズに多様性のある分類群としても知られている。生物の体サイズは、遺伝要因と環境要因による複合的な要因により決定され、自然環境に適応した値をとると考えられている。体サイズは、その生物の生活史や生態学的特性、生理学的特性と関連しており、その生物を理解するために重要な指標となる。昆虫は多様な種を含む分類群であるが、一般的に体サイズが小さく、多くの生態系において被食者の役割を担っている。昆虫は、生存率と繁殖成功率を上げるため、様々な環境に適応した形態をとる必要がある。昆虫は脱皮により成長し、体サイズは卵サイズ、成長率、内分泌の制御などにより決定される。そのため、気温や緯度に伴い全長あるいは各部位の長さが変化することが多く、小型のコオロギであるシバスズやマダラスズでは、日本列島において南から北に向かって産卵管長が長くなる傾向が報告されている。
本研究で着目したキリギリス亜目昆虫は日本産の種だけでも棲息環境や食性に大きな多様性をもつ。日本におけるキリギリス亜目昆虫は、キリギリス上科、コロギス上科、カマドウマ上科、コオロギ上科からなる。一般的に雑食性であるが、葉食性のツユムシや肉食性のウマオイやコロギスなども含む。また、樹上性のカネタタキや地中に棲むケラがおり、産卵場所もコオロギやキリギリスのように地中に産むものやカンタンやクサキリのように植物に産み付けるものもいる。本研究では、多様な日本産キリギリス亜目昆虫約100種の体サイズの多様性を調べ、日本におけるキリギリス亜目昆虫の環境適応について考察した。


日本生態学会