| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-204  (Poster presentation)

フィプロニルを使ってブラウジングアントをやっつけろ!
Efficacy of insecticide fipronil to invasive browsing ant

*早坂大亮(近畿大学), 瀬古祐吾(国立環境研究所), 平岩将良(近畿大学)
*Daisuke HAYASAKA(Kindai Univ.), Yugo SEKO(Natl. Inst. Environ. Stud.), Masayoshi K HIRAIWA(Kindai Univ.)

欧州南部原産のハヤトゲフシアリLepisiota frauenfeldi(ブラウジングアント)はアルゼンチンアリLinepithema humileと同様,スーパーコロニーを形成し,また繁殖力や攻撃性も高いため,侵入各地で在来の節足動物群集や農作物に深刻な影響をもたらす.本種は2017年に我が国で初めて確認され,2020年には特定外来生物に指定された.早急な防除が望まれるが,現時点で具体的な指針は定められていない.遅行性殺虫剤のフィプロニルは,侵略的アリ類の防除戦略上,最も効果的な薬剤のひとつとされる.そこで本研究では,ブラウジングアントに対するフィプロニル剤の効果を検証し,効果的な防除手段を提案した(なお,実際の試験は2017年10月におこなった).急性毒性試験(48-h LCx)を実施して,本種に対するフィプロニルの致死濃度(LC10:ほぼ効果なし,LC50:半数致死濃度,LC90:大部分の個体を殺滅可能)を算出した.このデータをもとに,その他の侵略的外来アリ(アルゼンチンアリ,ヒアリSolenopsis invicta)の既往データと比較することで,本剤に対するブラウジングアントの感受性を明らかにした.結果,ブラウジングアントに対するフィプロニルのLC10・LC50値は,その他のアリ類の値より有意に低かった(感受性が高い)が,LC90値はアルゼンチンアリの値とほぼ同じだった.これは,現在アルゼンチンアリやヒアリに対して実施されているフィプロニルを用いた化学的防除がブラウジングアントにも効果的であることを示唆するものである.さらに,アルゼンチンアリのフィプロニル感受性が在来節足動物の感受性より高いことを加味すると,アルゼンチンアリを殺滅させるのに必要な濃度(最低LC90値)と同程度の濃度で防除を実施することで,生態系に配慮したブラウジングアント根絶につながるだろう.


日本生態学会