| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-211  (Poster presentation)

全球解析からみた外来アリと在来アリが利用する生息環境の違い【B】【E】
Do native and non-native ants use different habitats?【B】【E】

*池上真木彦(国立環境研究所)
*Makihiko IKEGAMI(NIES)

背景:人類の経済活動の広域化により、外来種の侵入事例が増加している。外来種の多くは、侵入地域において都市など攪乱が多い環境に生息することが知られているが、本来の自生地域でこれらの外来種がどのような環境に生息するかの知見は限られている。そこで本研究は外来種の中でも影響が大きいアリ類に着目し、在来アリを含めアリ各種の侵入地域と自生地域における生息環境ニッチを推定し類型化することで、外来アリを輩出しやすい生息環境を推定することを目的としている。
方法:Global Biodiversity Information Facility より在来種を含んだ全球アリ分布データを入手し、他データベースを参照にして各種各地点における分布状況(外来・在来)を整備した。そして土地利用データから、アリ各種の侵入地域と自生地域それぞれにおける生息環境ニッチを主成分分析により算出し、階層クラスタ分析による類型化を試みた。
結果:クラスタ分析の結果、侵入地域における外来アリは特定のクラスタに出現することが多く、主に湿性草原、都市部そして沿岸部を利用する種が多く見られた。外来アリはその自生地域においてもある程度まとまったクラスタに出現する傾向があり、やはり湿性草原や都市部そして沿岸部を利用する傾向がみられた。その一方で外来アリが殆ど出現しない・輩出もしないクラスタも存在することが判明した。
考察:外来アリが多く出現するクラスタに属する在来アリは、外来アリと競合する可能性が高いと考えられるため、侵入地域において競合関係があるか確認を進める必要があるだろう。また外来アリを多く輩出しているクラスタに属する在来アリは、今後外来種となる可能性が高いと考えられるため、侵入リスク評価を進める必要があるだろう。その際、形態や食性などの種特性を含めた解析を進めることで、外来種の起源に寄与する要因への理解を深め、侵入定着阻止において有用な知見をもたらすと考えられる。


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