| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-224  (Poster presentation)

九州におけるオイカワ外来遺伝子の侵入実態の解明
Genetic introgression from non-native haplotypes in pale chub populations in Kyushu.

*北西滋(大分大学), 鬼倉徳雄(九州大学), 向井貴彦(岐阜大学)
*Shigeru KITANISHI(Oita Univ.), Norio ONIKURA(Kyushu Univ.), Takahiko MUKAI(Gifu Univ.)

コイ科魚類オイカワは、関東以西の河川中下流域に自然分布している。これまでの研究から、日本列島のオイカワは、東日本系統、西日本系統、および九州系統の3つの系統に大きく分けられることが明らかとなっている。しかし、琵琶湖産アユ種苗への混入により、西日本系統の個体が全国へ分布を広げており、各地で遺伝的攪乱が懸念されている。本研究では、九州全域を対象に、九州系統(在来系統)と西日本系統(外来系統)とを判別するmtDNA SNPを用いて、オイカワ外来遺伝子の侵入実態の解明と侵入に関連する環境要因を調べた。
九州全域の73地点(2,349個体)を対象にSNPジェノタイピングを行った結果、73地点中46地点から外来遺伝子が検出され、各地点の外来遺伝子の割合は0~100%であった。外来遺伝子の侵入状況は地域ごとに大きく異なり、九州日本海側(福岡、佐賀)および南部(宮崎、鹿児島)で外来遺伝子の割合が高い傾向が見られた。次に、外来遺伝子の侵入に寄与する環境要因を明らかにするため、外来遺伝子数を目的変数、土地利用データや河川データなどを説明変数とし、GLMによるモデル選択を行った。その結果、水面面積が小ささや九州西部であることが外来遺伝子の侵入に寄与していた。また、ダム上流も外来遺伝子の侵入に正の影響を与えていた。
 以上より、九州全域においてもオイカワ西日本系統が広く侵入していることが明らかとなった。ダム上流部では琵琶湖産アユの放流が実施されていたことから、九州へのオイカワ西日本系統の侵入は、琵琶湖産アユ種苗への混入による非意図的な侵入が主要因であると考えられる。また、九州西部を中心とするオイカワの食文化により、九州各地でオイカワの移植放流も実施されている。この意図的なオイカワの放流も外来遺伝子の分布拡大を促進していると考えられる。


日本生態学会