| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-227  (Poster presentation)

腸内細菌叢を用いたニホンザルの加害・悪質性の判別の可能性
Possibility of the determination method as aggression and crop-raiding tendency in Japanese macaques using gut microbiota.

*清野未恵子(神戸大学), Wanyi LEE(Kyoto University), 半谷吾郎(京都大学), 早川卓志(北海道大学), 福田伊津子(神戸大学), 森光由樹(兵庫県立大学), 山端直人(兵庫県立大学), 清野紘典(WMO), 鈴木克哉(里地里山問題研究所)
*Mieko KIYONO(Kobe University), Wanyi LEE(Kyoto University), Goro HANYA(Kyoto University), Takashi HAYAKAWA(Hokkaido University), Itsuko FUKUDA(Kobe University), Yoshiki MORIMITSU(University of Hyogo), Naoto YAMABATA(University of Hyogo), Hironori SEINO(WMO), Katsuya SUZUKI(Research Institute for SATOMON)

日本固有種であるニホンザル(Macaca fuscata)による人里への出没並びに農作物被害は1980年ごろから続く深刻な問題であり、各地域に生息する群れの”地域性“を保ちながら、種としてのニホンザルを保全するための手法開発が求められている。ニホンザルが 各地に生息しうる環境をつくるには、ニホンザルの生息地に隣接する地域住民の理解と、ニホンザルが利用可能な自然植生を含む環境整備が必要であるが、まずは地域住民の理解を得ることが優先課題とされている。そこで、被害が深刻な地域では、被害を及ぼす加害(悪質な)個体や加害群の駆除等を通した対策が被害管理とあわせて進められている。現在、専門家の行動観察を通して加害個体が判別されることが多いが、判別指標には人間に向かってくるような攻撃性と、農地への依存性のどちらもが備わっている。加害個体を駆除して農地への出没を減らすには、農地への依存性が高い個体を駆除することが肝要であるが、ニホンザルは年間通して様々な食物を利用し、自然植生を利用する割合が高い群れでは半月で採食メニューが変化するため短期間の調査での判別が有効か否かは慎重に検討する必要がある。専門家の行動観察が通年行われていれば加害個体の判別の正確性が高まるが、専門家が少ない中で国内全体で加害個体の判別が求められるとすれば行動観察のみを用いる方法では限界がある。したがって行動観察以外の手法で農地への依存性を判別する手法開発が必要である。そこで我々は、農地への依存性を腸内細菌叢によって判別可能かについての研究を進めている。今回は、兵庫県丹波篠山市の加害レベルが高い群れを対象に、サンプリング手法の違いによる同一個体の腸内細菌叢の違いと、加害性が高いと判別され駆除された個体と駆除されなかった個体間で腸内細菌叢を比較した結果を報告する。


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