| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-240  (Poster presentation)

サンゴ飼育水槽の光環境の定量と溶存酸素の変動
Measurenment of light environment and dissolved oxygen in coral breading tanks

*三橋水樹香(玉川大学大学院), 増田篤稔(玉川大学), 吉川朋子(玉川大学)
*Nanaka MITSUHASHI(Guraduate Tamagawa Univ.), Atsunori MASUDA(Tamagawa Univ.), Tomoko YOSHIKAWA(Tamagawa Univ.)

 地球温暖化に伴う海水温上昇は,サンゴ礁白化現象の要因と考えられている.サンゴ礁白化現象の頻発により,近年,室内水槽で環境条件変動時のサンゴの反応の研究が多く行われている.しかし,室内実験の詳細な光環境の定量化はあまり行われていない.そのため,まず水槽の光環境を定量したうえで測定容器を作成し,Acropora属のサンゴ共生藻による光合成速度を定量することを目的とした.
 飼育水槽内の光環境をPPFD計で測定したところ,アクリル壁面の色と内面反射の影響によって光環境が変わり,水深が深く,壁面に隣接しない区画の光環境が最も均一性(均斉度)が高かいことが示された.溶存酸素測定の容器製作では,開放系と閉鎖系容器を作成したが,開放系容器は気体除去速度がサンゴ共生藻の光合成速度より速かったため,閉鎖系容器を用いて短時間の測定を行うことにした.サンゴ共生藻の光合成速度は,水槽内で容器の設置区画と人工照明の光量を変えて検討したところ,平面光量が高い区画順で高く,光量に準じて光合成速度が異なった.実験過程で,水温変動が光合成速度に影響すると分かったため,水温変動に対する純光合成速度と呼吸速度,総光合成速度の検討をした.20.4℃-24.5℃の範囲で測定をした結果,サンゴ共生藻の光合成やサンゴ細胞の代謝が活発になる水温が異なることが確認された.
 これらのことから,サンゴ共生藻の光合成速度は平面光量に影響されるため,サンゴを用いた実験時には光環境を考慮する必要があり,水温によって純光合成速度や呼吸速度が異なるため,水温も0.1℃単位で考慮する必要があると考えらる.今後はより細かく光量や水温に対するサンゴの反応を求めるとともに,開放系容器を用いた長期的飼育による実験の検討が必要であると考える.


日本生態学会