| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-241  (Poster presentation)

レッドリスト維管束植物の個体数変動推定:カテゴリカルデータから変動要因を特定する
Estimating population change of Red List vascular plants: identifying drivers of the change from categorical data

*松葉史紗子, 深澤圭太, 石濱史子(国立環境研究所)
*Misako MATSUBA, Keita FUKASAWA, Fumiko ISHIHAMA(NIES)

 環境変動と紐づけたレッドリスト種の個体数変動推定は、将来の気候・土地利用変動下の絶滅リスクを評価する上で必要不可欠である。しかしながら、時系列の個体数データの整備には多大な調査努力量が求められるため、しばしばカテゴリカルな個体数階級の記録が採用される。そうした階級データを活用して、変動要因の特定、ひいては将来の個体数変動を予測する手法の開発が必要である。
 階級データに適用可能な手法の一つとして、入れ子ロジットモデルが挙げられる。この手法は、階級ごとに異なるパラメータ推定を可能とし、その結果は個体数の大きさに応じた保全管理施策の提案に貢献できるだろう。本研究では入れ子ロジットモデルをレッドリスト維管束植物1010種に適用した。植物データは日本植物分類学会から提供を受け、モデルでは2時期の個体数階級(絶滅、10個体数未満、100個体数未満、1000個体数未満、1000個体数以上)の変化を環境変動から推定することとした。モデルの応答変数には、2時期のうち後期の個体数階級情報を与え、説明変数には、年平均気温、年間降水量、荒地率、農耕地率、市街地率、海岸率、河川・湖沼率、火山地率、保護区面積、前期個体数階級を与えた。全ての説明変数に対して系統相関のランダム切片・傾きを考慮し、系統相関の導出には最近隣ガウス過程を用いた。
 推定された係数の結果から、保護区は一貫してすべての階級で個体数を増加させる効果をもつ一方で、荒地率、市街地率、農耕地率は階級によって効果が異なることが明らかになった。具体的には、荒地率は1000個体未満から1000個体以上への変化には影響せず、市街地率と農耕地率は絶滅するか否か、そして100個体未満から1000個体未満への変化にのみ影響していた。今後は開発したモデルを将来シナリオに適用し、種ごとの絶滅リスク評価を進めていく計画である。


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