| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-267  (Poster presentation)

避難指示区と廃村のデータによる無居住化の生物多様性影響評価:チョウ類を用いた試み
Evaluation of biodiversity impact of uninhabited zones using data of evacuation zones and abandoned settlements: a case study of butterfly

*吉岡明良, 深澤圭太, 熊田那央, 小川結衣, 大内博文, 西森敬晃(国立環境研究所)
*Akira YOSHIOKA, Keita FUKASAWA, Nao KUMADA, Yui OGAWA, Hirofumi OUCHI, Takahiro NISHIMORI(NIES)

無居住化・耕作放棄等の人間活動の縮小は里地里山の生物多様性を脅かすとされている。里地里山管理のリソースをどのように割り当てるべきかを検討する上で、放棄期間と生物多様性の関係に関する知見が有用となるはずである。特に、今後、広い範囲で耕作地が長期間放棄される恐れもあることを踏まえると、より長期間及び広範囲での無居住化・耕作放棄による影響を反映していると考えられるデータを用いて知見を得ることが望ましい。東京大学と国立環境研究所の共同研究(Sugimoto et al., Proc. Royal Soc. B 2022)では、2015年から2016年にかけて全国各地の廃村とその近隣集落におけるチョウ類目視調査によるデータが得られている。また、国立環境研究所では2011年の原発事故に伴う福島県の避難指示区域とその周辺において、2015年から衝突板トラップ等を用いた昆虫調査を実施してきた。前者は離村後50年以上経過した廃村も含む調査であり、放棄によって負の影響を受けると推測される種が多数派であることを階層ベイズモデルによって示すとともに、得られたデータを公開している。後者は基礎自治体スケールで耕作が停止した避難指示区域を対象に含む調査であり、演者らによる予備的な解析では避難指示区域内でチョウ類の合計個体数が少ない傾向があること等が示されている。本発表ではそれらのデータを統合的に扱うことで、耕作放棄の期間とチョウ類の関係に関してより頑健な知見を得る試みについて紹介する。


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