| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-274  (Poster presentation)

丘陵地域の里山二次林における2018〜2022年のナラ枯れ状況
Japanese oak wilt in secondary forests of Satoyama in a hill region from 2018 to 2022

*関川清広(玉川大学), 友常満利(玉川大学), 勝島可奈子(玉川大学), 小酒井正和(玉川大学), 永井信(海洋研究開発機構)
*Seikoh SEKIKAWA(Tamagawa University), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa University), Kanako KATUSHIMA(Tamagawa University), Masakazu KOZAKAI(Tamagawa University), Shin NAGAI(JAMSTEC)

 ナラ・カシ類萎凋病(ナラ枯れ)は,コナラ属などの一部の樹種に対して,養菌性キクイムシとそれが媒介する菌類によって引き起こされる.ナラ枯れによる被害は,1990年代以降に日本海側や西日本の一部で報告され,2010年代後半以降,関東地方でも被害が広がりつつある(林野庁).被害が著しい樹木個体は通導機能が損なわれ,高温となる夏期以降,枯死して立枯れ状態になる.樹木の枯死に伴い,葉は萎凋・褐変して樹上にしばらくとどまるが,時間とともに落葉する.ナラ枯れの被害が著しい,すなわち被害による枯死木が多数の林分では,林冠ギャップが形成され,林内環境の変化に伴い林床植物の生育環境に影響を及ぼす.本講演では,無人航空機(ドローン)による空撮画像(RGBおよびマルチスペクトル)に基づいて,里山二次林でのナラ枯れの発生状況を評価し,ギャップの形成過程を明らかにすることを目的とした.演者の大学キャンパスには里山環境が残されており(関川ら,2021(ESJ68-E02-06),2022(ESJ69-P2-131)),コナラが優占する広葉樹二次林において,2019年にナラ枯れが散発し,2020年以降に被害が拡大し,2022年現在も継続している(観察記録による).空撮画像に基づくオルソ画像の解析から,平均ナラ枯れ面積(林分当たり)は,2018年は0 m 2,2019年は約10 m2,2021年はピーク値の約1800 m2となった.平均面積の増加率(m2/m2)は,2019-2020年が約120,2020-2021年が約85,2021-2022年が約-70で,被害面積は2021年以降減少傾向であった.このナラ枯れ状況の経年変化に基づいて,発生した林冠ギャップについて言及する.


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