| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-275  (Poster presentation)

延焼速度モデルを用いた日本の森林の火災強度の推定と樹冠火への移行可能性の検討
Estimation of fire intensity and the transition from surface fire to crown fire at forests in Japan based on Rothermel's fire spread model

*吉藤奈津子, 後藤義明, 玉井幸治(森林総合研究所)
*Natsuko YOSHIFUJI, Yoshiaki GOTO, Koji TAMAI(FFPRI)

日本の林野火災発生件数は過去50年ほどにわたって減少傾向にあるものの、近年でも年間1000件以上発生している。林野火災は一般に林床が燃える地表火から始まるが、その勢いが増すと樹冠火が発生し急激に被害が拡大する。林野火災リスクを評価するには、発生リスクとは別に、発生後の地表火の強度や樹冠火への移行可能性を検討する必要がある。本研究では、スギ林、ヒノキ林、アカマツ林、アラカシが優占する常緑広葉樹二次林(以下アラカシ林)、コナラが優占する落葉広葉樹二次林(以下コナラ林)を対象に、様々な風速条件での地表火の火線強度を推定した。計算にはRothermelの延焼速度予測モデルとByramの火線強度式を用い、林床可燃物の質・量の実測値を入力した。また、過去に提案された経験式を用いて樹冠火が発生する地表火の火線強度の閾値を推定し、樹冠火発生の可能性を検討した。
同じ風速・斜面傾斜で比較するとヒノキ林の火線強度が最も小さかった。パッキング率が比較的高く(林床可燃物量に対して堆積深が小さく密な堆積状態)、葉リターの表面積-体積比が小さいためと考えられる。コナラ林の火線強度が最も大きかったが、入力した葉リターの表面積-体積比(落葉広葉樹28種の平均)が大きいためと考えられる。枝打ち後のスギ林は林床可燃物量が多く、そうでない場合より火線強度が著しく大きかった。風速が大きいほど火線強度は大きくなるが、斜面傾斜10度の場合、ヒノキ林では枝下高が3mであれば風速10m/sの強風下でも樹冠火になる可能性は低いと推定された。一方、コナラ林は、枝下高が5mであっても風速5m/sで場所によっては樹冠火が発生する可能性があると推定された。実際の森林の林床可燃物の構成や林分構造は複雑なので、本推定結果がどの程度現実を反映しているかをさらに検証する必要がある。


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