| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-03  (Poster presentation)

海岸漂着物が植物に与える影響【A】
Effects of coastal debris on plants【A】

*福田基一, 松永塡生, 越智雅, 磯村友来理(山口県立宇部高等学校)
*Kiichi FUKUDA, Tensei MATSUNAGA, Miyabi OCHI, Yurari ISOMURA(Ube Senior High School)

 熱帯や亜熱帯のマングローブでは、海岸漂着物に覆われることが原因の生育阻害が観察されているが、これまで海岸漂着物の量と植物の生育阻害との関係は十分に研究されていない。また、山口県にはセミマングローブのハマボウが分布するが、海岸漂着物による生育阻害の実態はまだ調べられていない。そこで、「海岸漂着物はハマボウなどの海浜植物の種子や植物体を覆い、種子発芽や発芽後の生育を阻害する」と仮説を立て、研究を実施した。
 調査地は山口県の瀬戸内海・日本海沿岸8ヶ所のハマボウ生育地を選定した。調査方法は植生調査の区画法を応用した。植物と同様に海岸漂着物の種類ごとに地面を被覆する度合いを調べ、被度階級に当てはめた。被度調査の対象となる植物は海岸漂着物への覆われやすさで3分類[木本(ハマボウ)、草本(1m以上)、草本(1m未満)]、海岸漂着物は自然界での分解のされやすさなどから3分類[人工物(プラスチック、金属など)、自然物1(貝殻、岩石など)、自然物2(落葉・落枝・木材・生物遺体など)]し、それぞれの関係を考察した。さらに種子発芽とその後の成長の様子を調べるために、野外で採取したハマボウの種子を低温処理後に明所と暗所に100個ずつ播種し、発芽率などを調べた。
 被度調査の結果、海岸漂着物とハマボウの被度との関連性は見いだせなかったが、海岸漂着物の被度が高ければ、海浜の全植物の被度が低くなる傾向が見られた。種子発芽率は、明所83%・暗所81%、播種1ヶ月後の発芽20個体の胚軸及び主根の長さ(単位mm)の平均は、胚軸の明所44・暗所58、主根の明所21・暗所29であった。以上のことから、海岸漂着物が海浜植物に与える生育阻害の影響は、樹高の高いハマボウの被度と種子発芽率では小さく、草丈の低い植物では大きくなることがわかった。これらのことから、海岸漂着物はハマボウの幼植物体の生育を阻害し、その定着を妨げている可能性が示唆された。


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