| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-05  (Poster presentation)

トビ棘口吸虫の宿主サイクルⅡ【A】
The cycle of Echinochasmus milvi's hosts Ⅱ【A】

*永江朔也(岐阜県立岐山高等学校)
*Sakuya NAGAE(Gizan high school)

 トビ棘口吸虫は、カワニナを第一中間宿主、魚を第二中間宿主とし、鳥を最終宿主とすると考えられる寄生虫であり、カワニナ体内ではセルカリアの状態で、魚の鰓ではメタセルカリアの状態で、鳥の腸管内では成虫の状態で寄生している。これまでの実験によって得られた成虫、レジア、セルカリア、メタセルカリアのDNA解析を行った。また、鳥の腸管内で発見された成虫の体内に卵が存在したことから、鳥の糞内から卵を探すことによりトビ棘口吸虫の成虫が鳥の腸管内に卵を産むことを証明することを試みた。
 鳥の糞の中にトビ棘口吸虫の卵が存在するのかを確認するために、カワウの営巣地である海津市の千本松原コロニーで採取したカワウの糞と、長良川鵜飼で魚を捕食しているウミウの糞を観察し、虫卵を見つけることができた。
 採取したトビ棘口吸虫のレジア・セルカリア・メタセルカリア・成虫・虫卵のミトコンドリアCOⅠ領域(821bp)をDNA解析し、分子系統樹を作成した。レジア、セルカリア、成虫の塩基配列が一致し、DDBJ上のトビ棘口吸虫の塩基配列と一致した。しかしメタセルカリアは別種であった。
 未だ得られていないトビ棘口吸虫のメタセルカリアを発見し、DNA解析を行うことにより、カワニナ、魚、カワウに寄生するトビ棘口吸虫の生活環の裏付けをしていく。カワニナへの寄生率は5%、魚への寄生率は現在0、カワウへの寄生率は幼鳥で100%と、宿主によって寄生率に違いがあることを確認している。検体数を増やし、正確な寄生率を求め、トビ棘口吸虫の進化における宿主の依存度について調査していく。また、カワニナからのセルカリアの排出に季節性があることを確認しているので、その他の宿主への寄生にも季節性があるのか、定期的にカワニナや魚を捕獲し、調査を進めていく。


日本生態学会