| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-07  (Poster presentation)

北野の谷戸におけるサイハイランの分布と里山保全活動の関係【A】
Relation between distribution and satoyama conservation activities of Cremastra appendiculata in Kitano small valley forest【A】

*石嶋健吾, 松島源希, 岡本爽, 松尾治輝, 酒巻快(海城中学高等学校)
*Kengo ISHIJIMA, Motoki MATSUSHIMA, Sawa OKAMOTO, Haruki MATSUO, Kai SAKAMAKI(Kaijo school)

 準絶滅危惧種に指定されているサイハイラン(Cremastra appendiculata)は里山の雑木林などに良くみられる植物であるが里山の減少や開発、園芸目的の採集等で減少していることが知られている。しかしながら参考になる保全事例も非常に少ない。本事例では北野南二丁目里山保全地域(以後谷戸と呼ぶ)内のサイハイランの分布や個体数の推移を把握し、その上で北野の谷戸における里山保全活動の与える影響の有無について調査することを目的とする。
 サイハイランの生態調査では、サイハイランは5月から桃色の花を咲かせ始め、8月の終わり頃から10月にかけて葉を枯らし、11月以降徐々に新しい葉が生えることがわかった。さらに各群生における数の推移を調査した結果、一つの群生のみ急激に個体数を増やしていた。
個体数の増減の要因として下草刈り(=落ち葉掃き)の有無や群生ごとの相対光量が関係していると考え調査を行なった。その結果、下草刈りは個体数の増減に関与しないことが考えられた。さらに群生ごとの相対光量に関しても、個体数の増減には影響しないことが考えられた。
 そこで、土壌硬度に着目し、サイハイランの群生のある場所、群生が消失した場所、落ち葉掃きが行われている場所で調査を行なった。その結果、群生のある場所が他の場所に比べ土壌硬度が有意に低かった。また、群生が消失した場所においては土壌硬度が高くなってしまったことで消失したと考えられる。実際に、その地点に伐倒したナラ枯れ木を回収する重機が通っていたことがわかっている。
 これらのことから、サイハイランは生息地の光量の影響はあまり受けず、むしろ土壌硬度の低い場所で増加しやすいことがわかった。これは、サイハイランが部分的菌従属栄養植物であり菌根菌から栄養を貰うことから、菌根菌が生育しやすい土壌条件として腐植土層が厚い土壌が好まれる可能性が考えられる。


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