| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-09  (Poster presentation)

アレチヌスビトハギの繁殖戦略【A】
The reproduction strategy of Desmodium paniculatum【A】

*進藤慶太(岡山大安寺中等教育)
*Keita SHINDO(Okayama Daianji SS)

 マメ科アコウマイハギ属のアレチヌスビトハギ(Desmodium paniculatum)は北米原産の帰化植物で、繁殖力が強く、環境省、農林水産省「生態系被害防止外来種リスト」で「その他の総合対策外来種」として指定されている。日本では東北地方南部から沖縄にかけて分布しており、引っ付き虫として種子散布を行っている。本種の花は昆虫の訪花時に翼弁と竜骨弁が押し下げられると雄しべと雌しべが跳ね上がる、爆裂という特徴をもつ。この際に、葯や柱頭が訪花昆虫の腹部に触れる。一度爆裂すると翼弁や竜骨弁は元に戻らず、花粉もほぼすべて放出される。爆裂前に外部から生殖に関与することはできないため、爆裂の有無が訪花や干渉の指標となる。また、爆裂後の花に昆虫が再訪することはほとんどない。しかしながら、本種の繁殖生態はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、花の観察と袋掛け実験により、爆裂花という性質と高い繫殖力について調査することを目的とした。
 観察では、野外で自生するアレチヌスビトハギの爆裂花は実際に機能しているものの、花全体に占める爆裂後の花の割合が低く、あまり訪花されていないことが示唆された。また、爆裂前の花、人工的に爆裂させた花のそれぞれに袋掛けを行い、昆虫の影響を排除してコントロールと比較したところ、処理にかかわらず結果率はいずれも高かった。一般的に爆裂花は他家受粉を促進する機構であると考えられているが、本種では自動自家受粉、アポミクシスなどの自殖機構が発達している可能性がある。
 今回、繫殖戦略の特定には至らなかったが、今後除雄処理や人工的な自家、他家受粉処理を行うことでさらなる理解につなげたい。繫殖戦略を明らかにすることで、侵略的外来種であるアレチヌスビトハギへの効果的な対策を提案できると考える。


日本生態学会