| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-17  (Poster presentation)

紙魚の食性~紙魚は紙の何を食べる?~【A】
Food of firebrat ~What part of paper do firebrat eat?~【A】

*伊添万志郎, 村井瞭介, 見尾竜海(高槻高等学校)
*Bansiro IZOE, Ryosuke MURAI, Tatsumi MIO(Takatsuki Senior High School)

マダラシミ(Thermobia domestica)は熱帯、亜熱帯地域に広く分布し、本などの紙製文化財を食害することで知られている昆虫である。昨年度おこなった予備実験より、マダラシミは他個体が食べた部分を好んで食べることが分かった。私たちは、シミが摂食時に口器から他の個体を引き寄せるフェロモンを分泌し、フェロモンが付着している箇所好んで食べるからであるという仮説を立て、今年度は実験を行った。 実験では、マダラシミが食べた紙と食害されていない紙をジエチルエーテルにそれぞれ15分間浸して作成した二つの抽出液を5cm四方の紙に浸した。それらの抽出液を、マダラシミを15匹入れたケースに入れ、ImageJを用いて、食べられた面積を計測した。 その結果、マダラシミが食べた紙から作成した抽出液に浸した紙がよく食べられ、マーキングフェロモンが存在する可能性が示された。このフェロモンは、一般的に暗所に生息し、視覚を餌の認識に用いることが難しいマダラシミの生存戦略であると考えられる。 また、昨年度の実験より、マダラシミは紙にインクを塗った場合、そこを避けて食べることが明らかとなった。そこで、このマーキングフェロモンを用いればインクを塗った箇所であってもマダラシミに食べさせることができるのではないかと考え、実験を行った。先ほどの実験と同様に抽出液を作成し、3cm四方に切った紙の油性ペンで塗りつぶしたものに食べられた箇所から作成した抽出液を滴下し、何も塗っていないものに食べられていない紙から作成した抽出液を同様に滴下した。それらの抽出液を、マダラシミを10匹入れた1Lビーカーに入れ、食べられた面積をImageJで測定した。結果としては、予想通りインクを塗った方がよく食べられていた。今後はフェロモンを用いて、マダラシミによる廃棄された紙の処理を行うことを目標として研究を進めていきたい。


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