| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-19  (Poster presentation)

カラスバトは何を話しているのか。  その音声コミュニケーションを紐解く【A】
What are the wood pigeons talking about. Unraveling that voice communications.【A】

*久保光次郎, 相田麻衣, 納谷莉子(都立国分寺高校)
*Koujirou KUBO, Mai SOUDA, Riko NAYA(Kokubunji highschool)

カラスバトは主に伊豆諸島などの島嶼部に生息する鳥で、天然記念物に指定されている。また、準絶滅危惧種でもあり保全が必要な鳥である。しかし、個体数が少ないことや人前に滅多に姿を現さないことから調査が非常に困難な鳥だ。本校の生物部では10年以上前から伊豆大島で調査を行っており、カラスバトは暗いシイの森を好むことや、鳴き声にはV(ウー・ウ・ウーなど)、A(ガガガガガ)、P(ペーロン)があることが明らかになってきた。そこでカラスバトのそれぞれの鳴き声の意味を解明できれば、私たちから見えないところでカラスバトがどのような行動をしているのかが分かり、保全にもつながるのではないかと考え、カラスバトの鳴き声に関する研究を行った。研究では野外個体もしくは動物園の飼育個体の行動を観察するとともに録音機で鳴き声を録音し、行動と鳴き声を照らし合わせて意味を推測する、という方法をとった。また、今年からは録音機を森の中に一定時間設置することでカラスバトが活発に鳴く時間帯なども調べた。録音機で記録したデータは野鳥の音声分析ソフト「Raven Pro」で周波数や声紋を分析した。その結果、Vの鳴き声には短い音節(ウ)と長い音節(ウー)の2種類の音節の組み合わせ方によって少なくとも22種類もの鳴き方があることが分かり、鳴き方に文法が存在する可能性が示唆された。また飼育個体の観察では、特定の鳴き方(Vの中の1つ)においてオスとメスで周波数に違いが見られ、メスが鳴いたときのみ他のオスが反応したことから、同じ鳴き方でも周波数の違いによって意味が異なることが推測された。行動観察からは、Vの鳴き声は必ず止まっている時のみ発せられ、Aの鳴き声は主に、飛びながらあるいは歩きながら他個体に干渉するときに発せられたことから、Vの鳴き声には縄張り宣言の意味が、Aの鳴き声には威嚇の意味があると考えられ、またVとAで発声の仕方が異なることも考えられた。


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