| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-22  (Poster presentation)

森の宝石ブッポウソウ 巣立ちまでの記録
Breeding biology of Dollor bird Eurystomus orientalis

*斎藤野乃香(清心女子高等学校)
*Nonoka SAITO(Seishin Girls' High School)

 雌雄ほぼ同色である絶滅危惧種の渡り鳥ブッポウソウに雌雄の役割分担があるのか、時間帯によって餌の種類や給餌回数が変化するのかどうかを調べるために研究を行った。仮説は、雌雄による体格差はほとんどないため、雌雄の役割分担はなく、雌雄の与える頻度に違いはないと考えた。
 岡山県高梁市に設置されたブッポウソウの巣箱の内部と入口に定点カメラを設置して、その1ペアの子育ての映像を約3日ごとに計10日間、日付、時間、性別、餌の有無、餌の種類、餌の与え方などを項目ごとに集計し、グラフ化した。映像の解析期間は、1羽目のヒナが孵化した6月27日から、最後のヒナが巣立った7月23日までとした。
 結果は、ヒナは同時に孵化しないため、卵やヒナを温めている時は、メスの給餌回数が極端に少なく、ほとんどオスが給餌していた。また、全ての日でメスよりオスの給餌回数の方が多かった。また給餌時刻は、1日の中で特に、4時、8時、13時、19時辺りが多く、ヒナの成長段階が異なっても同じ傾向が見られた。給餌内容としては、トンボが6月下旬から7月上旬にかけて多くそれ以降は激減した。セミは変動があまりなく、1日の中で特に8時台に多かった。
 ブッポウソウには雄雌の役割分担があることがわかった。卵やヒナを温める必要がなくなるにつれ、雄雌の給餌回数の差が無くなってきていることから、ブッポウソウには雄雌の役割分担は卵やヒナを温める必要がある時期のみで、それ以降の差は、その個体の狩りの巧拙によるものであると考えられる。特定の時間帯に給餌回数が多かったことについては、フライイングキャッチという空中で餌をとる方法で狩りをするので、飛んでいる餌が多い時間帯に集中的に狩りをしていたためと考えられる。今後の課題は、1ペア分の映像しか解析出来なかったので、もう1度同じ巣箱でヒナを育てている他のペアについても検証したい。


日本生態学会