| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-27  (Poster presentation)

里山のニホンジカはこれから増えるのか?~齢構成からみる生態~
Will Japanese deers living at satoyama increase numbers? ~Ecology seen from the age composition~

*古川智菜, 千田和也, 水谷茉白, 鈴木志昊, 松岡茜音(浜松学芸高校)
*Norina FURUKAWA, Kazuya CHIDA, Mashiro MIZUTANI, Shiyu SUZUKI, Akane MATSUOKA(Hamamatsu Gakugei High School)

本研究では、ニホンジカ雌雄間でみられる活動時間や活動環境の相違が、捕獲効率に及ぼす影響を解明することを目的とする。調査は、2021年5月~2022年6月にかけて静岡県立森林公園内で行った。園内に設置した100×100mの3つの調査地点内に合計15の撮影ポイントを均等に分布させた。ニホンジカが撮影された場合は、角の形状(無、1尖、2尖、3尖、4尖)、個体数、体サイズ(成獣・幼獣)、撮影日時、撮影場所を記録し、撮影頻度(カメラ1台を100日設置したときの撮影枚数)を算出して評価した。また、動画をもとに撮影範囲内の滞在時間を算出し、RESTモデルを参考として生息密度を算出した。本研究より、ニホンジカの雄の動画撮影回数は414回、雌は50回、幼獣は414回であった。雄の撮影回数が多いのは、泥浴びや雄同士で闘争のため滞在時間が長くなったからである。幼獣は動きが遅く、1度の訪問で数回撮影されることが多かった。成獣の雄と雌は照葉樹林に設置した調査地点でのみ確認できた。幼獣と成獣雌は早朝に撮影頻度が高く、成獣雄は早朝と夕方に撮影頻度が高くなり、薄明薄暮に活発であった。角形状に着目すると、春季には60%が角のない個体であり、残りは角が1尖の個体であった。夏季や秋季になると角が4尖の割合が急増した。体の大きな雄は秋季の繁殖期に向けて縄張りをもつため、角に枝分かれが少ない体の小さな個体が大きな雄の縄張りから追い出された可能性がある。その後、冬季から春季に向けて、生え変わりにより角のない個体が急激に増加した。本研究の調査期間に、ニホンジカ幼獣が多数確認できた。17年前、森林公園周辺ではニホンジカは全くみられなかったそうである。ニホンジカ生息密度が急増し、分布が拡大することで、ニホンジカ同士や他種の野生動物または植生に対して影響が生じ、さらに人間とのあいだで軋轢が生じるのではないかと懸念される。


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