| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-37  (Poster presentation)

ヨシが持つ2つの藍藻増殖抑制効果:Microcystis aeruginosaを用いた検証【A】
Two cyanobacterial growth inhibitory effects of reeds: Verification using Microcystis aeruginosa【A】

*飯田慧土(清風高等学校), 風間健宏(神戸大学), 奥田昇(神戸大学)
*Keito IIDA(Seifu High School), Takahiro KAZAMA(Kobe Univ.), Noboru OKUDA(Kobe Univ.)

清風高校生物部で管理しているニッポンバラタナゴの保護池では、ラン藻の大増殖(アオ
コ)が度々発生する。保護池ではヘドロ浚渫を行いアオコを防除しているが、減水によ
るタナゴへの負担が大きい。そこでアオコ防除対策としてヨシ(Phragmites australis)に着目した。ヨシはアレロケミカル(AC)によるアレロパシー効果とヨシ表面のバイオフィルム(BF)内の殺藻細菌によりラン藻増殖を抑制するとされるが、どちらも自然条件と極端に異なる実験条件下でしか報告されていない。本研究では自然に近い条件下でACと殺藻細菌がもつ藍藻の増殖抑制効果の大きさを明らかにすることを目的とし、ヨシとMicrocystis aeruginosa培養株を用いた培養実験を8、9月に計3回行った。まず溜池に自生するヨシを地下茎の節部分で切断し実験室に持ち帰った。ヨシを深さ50 cmの容器に純水5Lで数日飼育し、AC抽出液を作成した。次に新しく採取したヨシの茎 50 cmを滅菌ブラシでこすり、表面のBFを採取した。これをAC抽出条件と同じヨシ密度となるよう、純水 5 Lに懸濁した。M.aeruginosa培養株と培地90 mLを入れた滅菌フラスコに、純水 (対照区)、BF懸濁液、AC抽出液のいずれかをヨシの自生密度と同じ濃度になるよう添加した。繰り返しは3とし、27°C、光強度約100 μmol m⁻² s⁻¹の条件下でそれぞれ3~4日間培養した。培養実験の結果、M. aeruginosaの細胞サイズに差は無かったが、細胞増殖速度はBFで最大38%、ACで最大87%抑制された。つまり自然環境下においてもヨシのACや殺藻細菌は十分な増殖抑制効果を持ち、ACの効果が相対的に高いと結論づけられた。さらにACや殺藻細菌が光化学系IIの電子伝達に影響を与えているか調べるため、パルス変調蛍光光度計を用いM. aeruginosaの光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)を測定した。しかし、増殖速度の低下時にFv/Fmの低下がほとんど見られなかったため、ACや殺藻細菌は電子伝達以外の代謝や生合成を阻害している可能性が示唆された。


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