| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-38  (Poster presentation)

交替制転向反応の生態的意義に迫る【A】
The reaction【A】

*三浦幸太(兵庫県立宝塚北高校)
*Kouta MIURA(Takarazuka Kita High School)

 交替性転向反応とは「生物は左右交互に曲がる」という単純な反応である。ダンゴムシをはじめとする多くの生物で見られるこの交替性転向反応だが、海棲甲殻類に交替性転向反応があるかどうかについてはあまり知られていない。そこで、本研究では甲殻網に属するヤドカリを用いて、交替性転向反応を検証した。
 実験はユビナガホンヤドカリ(Pagurus minutus)を用いて、T 字の左右分岐を二回含む迷路を水中に沈め行った。結果は異なる150 個体で行った左右選択実験において 116 個体(78%)のヤドカリが左右の転向反応を示すことが確認できた。これらの結果から両側検定を行うと、交替性転向反応を示した個体の割合は有意に高い(p 値 < 0.005)ことが確認できた。このことからヤドカリが交替性転向反応を示すことがわかった。
 陸棲のみならず、海棲の生物にも交替制転向反応が見られたことで、大きく異なる生息環境でも交替制転向反応が見られる可能性が示唆されたことから、生物が交替性転向反応を示す要因について考えた。先行研究では、生物が交替性転向反応を示すのは身体の左右の負荷を均一にするためであるとするBALM仮説が提唱されている。これを検証するために分岐の前に2度同方向の強制転向させる迷路を作成し、強制転向と反対の方向に二度曲がった個体を身体の負荷を均等にしようとしたBALM仮説支持個体として評価した。その結果、BALM仮説を支持したのは各実験において30%(30個体/100個体)と31%(31個体/100個体)だった。
 上記の結果はBALM仮説を支持するには不十分と考え、現在は他の仮説を考えている。これまで交替性転向反応が確認されてきた生物は探索して餌を見つける生物がほとんどで、交替性転向反応を示すことによって摂餌範囲を広げられると考えた。よって今後は、待ち伏せ型の捕食者であるクモなどの生物でも交替性転向反応を検証し、摂餌領域と交替性転向反応の関係について調べていきたいと考えている。


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