| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-52  (Poster presentation)

ニホンスッポンの生態【A】
Biology of soft-shelled turtle【A】

*大関万尋, 三宅香萌(清心女子高等学校)
*Mahiro OZEKI, Kaho MIYAKE(Seishin Girls' High School)

 野外個体を飼育している際に、餌を食べなくなってしまった。また、餌によっては口に含んだ瞬間に吐き出すものもあった。本来は雑食性だと明らかになっている。このことから、本種の味覚に興味を持った。味覚について調べたところ、味蕾という味細胞の集まりによって、味を感じることができるということを知った。そこで、本種の味蕾の存在の有無、形状について調べることにした。ニホンスッポンの舌に味蕾細胞は存在し、味覚を感じ取ることができているのではないかという仮説を立てた。今回の実験で使用したスッポンは飼育している際に死んでしまったメスの個体である。
 研究手順は、解剖・固定・脱水・包埋・切片・染色・観察である。ただし、脱水の過程の後スッポンの舌を前頭面で三分割にして、残りの過程を行い、組織片は6μmの厚さにした。
 結果としては、組織片をしっかり染色することができず、味蕾と思われる構造は確認できなかった。そのため、切片の作製枚数を増やし、染色時間を変更して研究をやり直すことにした。しかし、2度目の結果も1度目の結果と同様に組織片を染色することができなかった。これらのことから、脱水・包埋の過程がしっかりできていなかったこと・スッポンの舌に適した染色時間を見つけなければならないと考え、料理屋から新たにスッポンの頭部を入手し、解剖から研究をやり直している段階である。
 現時点では、味蕾と思われる蕾状の構造は確認できなかった。今回は舌の一部分を前頭面での切片を作成し観察しただけであり、矢状断の組織片は確認できていない。よって今回の研究では、本種に味蕾は存在しないとは言い切れない状況である。今後の研究で、舌全体の切片を作成し、味蕾の有無をまずは確認したい。発見した場合は、形状がどのようになっているのか、またどの部分に存在しているのかなど、基本的な情報を明らかにしていきたい。


日本生態学会