| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-55  (Poster presentation)

銅像山における炭素収支の経年変化と炭素固定機能の改善【A】
Inter-annual variations in carbon cycle of “Dozoyama" and improving carbon fixation【A】

*藤吉康光, 山川寛太, 岳本航希, 近藤絢人, 工藤良史, 髙橋佑弥, 小山悠太(浅野中学・高等学校)
*Yasuaki FUJIYOSHI, Kanta YAMAKAWA, Koki TAKEMOTO, Ayato KONDO, Yoshihumi KUDO, Yuya TAKAHASHI, Yuta KOYAMA(Asano Senior High School)

 本校の山林には様々な生物が生息しており、神奈川県の鳥獣保護区にも認定され、貴重な生態系となっている。近年、地球温暖化によって様々な生態系が影響を受けている。地球温暖化の緩和策として、炭素隔離効果と土壌改良効果が期待されるバイオチャー(生物や植物の遺骸を嫌気的条件下で炭化させたもの)を森林へ散布し、炭素収支への影響を経年的に比較し、バイオチャーの効果を検証した。
 本研究では15m×15mの区画を2区画(A,B区)設置した。また、片方の区(B区)にバイオチャーを10t/ha散布した。生態学的手法を用いて、樹木の成長量(ΔB)、枯死脱落量(LF)、土壌呼吸量(SR)、地温や照度などの環境要因の測定を行い、炭素収支の指標である生態系純生産量(NEP)として2020~2022年にかけて算出した。
 B区のNEPは散布1年後(2022年)に50%増加する結果となった。これは①日照時間が減少した年でもΔBがほとんど減少しなかったこと、②2022年のLFにおける葉や実の量が著しく増加したこと、③SRが2021年と比べて著しく減少したことが起因していると考えられる。特にSR算出に使用した温度呼吸曲線では、散布直後(2021年)に高いSRを示したことから、土壌微生物の活性化が起こったことが示唆された。一方、非散布(A区)のNEPは、2022年にかけて3tC/haも減少する結果となった。A区は環境要因(日照時間や展葉期間)に大きく依存していると考えられた。また、本研究ではB区に7.2t/ha分の炭素を散布したことになるが、炭素放出量はA区の+2,5t/ha(2020~2022年)に留まり、炭素隔離効果としても大きく効果を発揮していることが確認できた。よって、森林生態系へバイオチャーを散布することは、樹木の成長量の増加や土壌改良の促進も確認でき、バイオチャーは森林生態系へも応用できることが示唆された。


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