| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-62  (Poster presentation)

滑川における魚類群集と環境要因の関係
Relationship between fish community and environmental factors in Namegawa River

*安江誠, 松原大知, 棚澤由実菜(東農大三高等学校)
*Makoto YASYASUE, Daichi MATSUBARA, Yumina TANAZAWA(3rd H. S., Tokyo Univ. Agric.)

学校の周辺を流れている滑川は令和元年東日本台風で増水したことがあり、今後も氾濫しかねない河川である。近年では豪雨による増水や護岸工事等で河川の環境が変化し、そこに生息する魚に影響を及ぼす可能性が示唆されているが、学校近辺の水域における魚類相については未だに調査されていない。そこで増水や護岸工事による魚への影響を知るために、基となる魚の季節変動を明らかにすることを目的とした。
滑川本流と支流である月中川との合流地点において、タモ網を用いて植物の生えた河岸を中心に追い込みをして魚を捕獲後、種類と個体数を測定した。捕獲のできない大型種や特定外来生物は目視での確認とした。また、調査時の気温、水温も記録した。季節区分は3〜5月を春、6〜8月を夏、9〜11月を秋、12〜2月を冬とした。
生物数は秋に最も多くなった。年間を通して採集された魚類の内訳はタモロコ50%、フナ30%、オイカワ7%、モツゴ7%であった。タモロコは4〜12月、フナ4〜11月、オイカワ10〜1月、モツゴ9~12月に観察された。これらの4種はどれも11月に個体数が最も多く、上旬にタモロコが最大になった後、下旬にフナも最大になっている。11月の水温は23℃から17℃へ徐々に低下しており、これがタモロコやフナの適性水温と一致したためだと考えられる。種数は6月に9種で最大となり、その後減少に転じた後、8月以降再び増加して11月に6種と多くなり、12〜2月にかけて2〜4種程度と低くなっている。6月はオイカワ、モツゴが見られない代わり、ヘラブナやチチブなどの個体数の少ない魚種が多くなっている。対して、11月は特に多い4種を中心にコイ、カダヤシが観察された。以上より、秋に魚類の個体数は最大となり多様性も高くなると分かった。今後さらに調査を続け、豪雨などによる水域の地形や植物の変化が魚類相に及ぼす影響についても注目していきたい。


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