| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S03-3  (Presentation in Symposium)

東南アジアのオイルパーム農園開発が土壌微生物および土壌炭素フラックスに及ぼす影響
Development of oil palm plantation in Southeast Asia and its impacts on soil microbes and soil carbon flux

*近藤俊明(国際農研), 孫力飛(国立環境研究所), 小杉昭彦(国際農研), KUMARSudesh(マレーシア理科大学), 梁乃申(国立環境研究所)
*Toshiaki KONDO(JIRCAS), Lifei SUN(NIES), Akihiko KOSUGI(JIRCAS), Sudesh KUMAR(Universiti Sains Malaysia), Naishen LIANG(NIES)

オイルパーム農園では、再植栽時に伐採されるオイルパームの幹や、果房の収穫時に剪定される大型の葉、パーム油の搾油時に生じる空果房など、膨大な量の農作物残渣が農園内に放置され、CO2やCH4に代表される温室効果ガスの発生など、地球規模の環境問題をもたらす原因となることが懸念される。
例えば、農園内に放置された葉や幹など、オイルパーム由来の有機物が土壌微生物によって分解される場合、膨大な量の二酸化炭素(CO2)が一時的に大気中に放出されるが、放出されたCO2は新たに植栽されるオイルパームによって吸収されるため、気候変動への影響はおおよそニュートラルになると考えられる。しかしながら、農園内に生息するシロアリによって採餌される場合には、シロアリの腸内共生細菌によるセルロースの分解によって、CO2の28倍の温室効果を持つメタン(CH4)として大気中に放出され、気候変動を促進する可能性がある。
そのため、シロアリや土壌病原性細菌など、オイルパーム農園内に放置される農作物残渣の分解者の特定や、分解等に起因して発生するCO2やCH4も含めた温室効果ガス発生量の統合的観測は、気候変動に寄与しない持続的オイルパーム農園経営の実現において重要な指標になる。
本発表では、マレーシアのオイルパーム農園内に設置した自動開閉式マルチチャンネルチャンバーを用いて得られたCO2発生量や、CH4発生・吸収量等を原生林データと比較することで、オイルパーム農園の造成・経営が気候変動におよぼす影響について考察する。


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