| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S03-6  (Presentation in Symposium)

デジタルソイルマッピングによる全国の森林の高解像度土壌炭素マップの作成
High-definition mapping of soil organic carbon in Japanese forest using “digital soil mapping"

*山下尚之(森林総合研究所)
*Naoyuki YAMASHITA(FFPRI)

土壌の性質(特性値)には様々な距離スケールにおいて顕著な空間異質性が存在することがよく知られている。土壌特性値は、気候変動問題を背景に発展してきた全球・地域スケールの生態モデルにおいても重要なパラメータの一部であり、より広域・高解像度・高精度の予測を実現するためにはその空間異質性をモデリングに反映させる必要がある。

一方、土壌は掘削しない限り観測ができないため、リモートセンシングによる面的な把握が難しい。そのため、土壌学の分野では土壌採取地点のデータ(点)を空間的な推定によってマップ(面)に拡張することで空間異質性を評価する研究が長らく行われてきた。これを一部ではデジタルソイルマッピングと呼び、国際土壌科学連合のワーキンググループとして認められるなど、90年代以降の主要な研究分野の一つとして発展を遂げてきた。この分野では、2000年代までは土壌の持つ空間的な連続性に着目した地球統計学手法の一つとしてクリギングによる空間推定がよく行われてきた。しかし、2010年代後半以降、クリギングによるマッピング事例は極端に減少し、現在は機械学習手法を用いたマッピング(機械学習マッピング)がほぼ主流となっている。この手法は土壌特性値を目的変数、地形・植生・気象といった地理空間情報を説明変数として未採取地点の土壌特性値を推定する。

本講演では、前半にこうしたデジタルソイルマッピングの現状について概説した後、後半では林野庁森林吸収源インベントリ情報整備事業の結果を用いて我が国で初めて全国スケールの機械学習マッピングを土壌に適用した事例を示す。本事例では10 mの空間解像度で全国の森林土壌における炭素濃度、容積重、石レキ率、炭素蓄積量の分布を0-5, 5-15, 15-30 cmの各深度で推定した。これらのマップは様々な評価や予測に活用されることを前提としており、本講演がその不確実性も含めたユーザーの理解の場となれば幸いである。


日本生態学会