| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S03-7  (Presentation in Symposium)

モンスーンアジア域における土壌温室効果ガスフラックスに関する研究の課題と展望
Challenges and Prospects of Studies on Soil GHGs Fluxes of Monsoon Asian Terrestrial Ecosystems

*梁乃申(国立環境研究所), 高木健太郎,(北海道大学), 平野高司(北海道大学), 石田祐宣(弘前大学), 近藤俊明(国際農研), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 寺本宗正(鳥取大学), 高木正博(宮崎大学), 市井和仁(千葉大学), 山貫緋称(千葉大学), ZHANGYiping(西双版納熱帯植物園), LAIDerrick Y.F.(香港中文大学), CHIANGPo-Neng(台湾大学), 孫力飛(国立環境研究所), 高橋善幸(国立環境研究所), 曾継業(国立環境研究所), MOHTIAzian(マレーシア森林研究所)
*Naishen LIANG(NIES), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Takashi HIRANO(Hokkaido Univ.), Sachinobu ISHIDA(Hirosaki Univ.), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Masahiro TAKAGI(Univ. of Miyazaki), Kazuhito ICHII(Chiba Univ.), Hina YAMANUKI(Chiba Univ.), Yiping ZHANG(XTBG, Ailaoshan Station), Derrick Y.F. LAI(CUHK), Po-Neng CHIANG(Taiwan Univ.), Lifei SUN(NIES), Yoshiyuki TAKAHASHI(NIES), Jiye ZENG(NIES), Azian MOHTI(FRIM)

大気中の二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)および一酸化二窒素(N2O)の濃度は、産業革命以降著しく増加を続けており、気候変動の主要要因となっている。これら温室効果ガスの排出に関しては、工業セクターからの排出と同様に、農業や自然生態系からの排出も多い。そのため、ほかの地域に比べてメタンの排出源となる水田が多い東アジアの気候変動に対する寄与は、極めて大きいと言える。一方で、森林や畑地などの土壌は、陸域におけるCH4の唯一の吸収源であると同時に、CO2やN2Oなどの発生源にもなっており、気候変動の将来予測において極めて重要な鍵を握っていると考えられる。我々が独自に開発・維持してきた「世界最大規模のチャンバー観測ネットワーク」を用いた20年以上の観測結果から、土壌有機炭素(SOC)の分解によって土壌から放出されるCO2の量が温暖化によって増加する(温暖化効果)こと、また、SOCの蓄積量が多く、湿潤なモンスーンアジア域の森林では、高い温暖化効果が長期間に渡って維持されることが明らかになった。一方で、野外における手動のガスサンプリングとガスクロを用いた室内分析によるCH4およびN2Oフラックスの観測例は、直近20年間で極めて少ない。近年、我々がチャンバー観測ネットワークを活用し、レーザー式CH4分析計を用いて行った連続観測では、アジアモンスーン域、特に火山灰土壌に特徴づけられる日本の森林土壌におけるCH4吸収能は極めて高いことが明らかになった。本発表では、これまでの研究成果を紹介するとともに、今後のN2Oフラックスに関する観測計画も紹介する。


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