| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S08-4  (Presentation in Symposium)

土壌炭素動態推定手法としての風乾土壌の水抽出有機物
Water extractable organic matter from air-dry soil to predict soil carbon dynamics

*永野博彦(新潟大学), 鈴木優里(新潟大学), 平舘俊太郎(九州大学), 安藤麻里子(原子力機構), 小嵐淳(原子力機構)
*Hirohiko NAGANO(Niigata Univ.), Yuri SUZUKI(Niigata Univ.), Syuntaro HIRADATE(Kyushu Univ.), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Jun KOARASHI(JAEA)

風乾土壌から水抽出された有機物 (WEOM) の分析による土壌有機物 (SOM) 分解プロセスの推定を試みている.茨城県北部の落葉広葉樹林内の40地点において,深さ0〜6 cmの土壌を収集し実験に供試した.WEOMの存在量はバルク土壌のSOMの3.6%未満であり,WEOM量とSOM量は強い正の相関 (r = 0.81, p < 0.01) を示した.また炭素および窒素の安定同位体存在比 (δ13Cおよびδ15N) もWEOMとバルク土壌のSOMとの間で強い正の相関 (r > 0.59, p < 0.01) を示した.しかし,WEOMの炭素/窒素比 (C/N比) は,バルク土壌のSOMのC/N比とほとんど相関せず (r = 0.06,p > 0.05),10前後の狭い範囲の値を示した.さらに土壌のSOM安定化に関与する有機物―鉱物複合体や非晶質鉱物の存在量に対し,バルク土壌のSOMに対するWEOMのδ13C濃縮は負の相関 (r = -0.53,p < 0.01) を,δ15N濃縮は正の相関 (r = 0.60,p < 0.01) を示した.これらの結果は,風乾土から水抽出したWEOMは微生物細胞に由来し,WEOMのδ13Cおよびδ15N濃縮は分解された土壌有機物やその分解プロセスの指標になることを示唆している.また,国内6か所の森林で採取した7土壌について生土の微生物バイオマス炭素と風乾土のWEOM炭素量を比較したところ,強い正の相関が示された (r = 0.93,p < 0.01) .以上より,風乾土のWEOM分析が大きな空間変動を示すSOM分解特性の有効な推定手法であることが示されつつある.


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