| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S08-6  (Presentation in Symposium)

公共メタゲノムデータで土壌微生物ダークマターに光を当てる
Shedding light on soil microbial dark matter using public matagenomic data

*西村陽介(海洋研究開発機構)
*Yosuke NISHIMURA(JAMSTEC)

環境微生物の研究では、試料中の微生物DNAの塩基配列を解読する「メタゲノム解析」が必要不可欠な手法として定着しており、その配列データは公共データベースに爆発的な勢いで蓄積されてきている。特に近年では、メタゲノム解析によって個々の原核生物やウイルスのゲノムを解読する技術が確立され、特に腸内環境や海洋環境においては大規模メタゲノムデータを活用して、いわゆる微生物「ダークマター」と呼ばれる未培養微生物のゲノム配列が解読されている。発表者はこの解析技術を新しく開発し、海洋原核生物52,000ゲノムの解読に成功した(Nishimura and Yoshizawa, 2022, Sci. Data)。また、海洋メタゲノムデータからウイルスの完全長ゲノムを1,600ゲノム解読し、未培養ウイルスのゲノム多様性を明らかにした(Nishimura et al, 2017, mSphere)。
発表者は公共メタゲノムデータを環境横断的に収集し、統一された手法で再解析することによって、地球上の微生物を網羅的に理解するための情報解析を行っている。土壌についても、200以上の論文で発表されたメタゲノムデータを収集しており、遺伝子、ゲノム、環境の3つの要素を中心とした解析を進めている。具体的な解析内容は以下のとおりである。(1)それぞれの土壌メタゲノムデータから個々の原核生物やウイルスのゲノムを解読し、そのレパートリーや多様性を明らかにする。(2)メタゲノムサンプルが得られた環境を特徴づけるために、データベースや文献に記述されている各試料の由来となる環境情報を収集し、そのメタゲノムから得られる遺伝子や生物系統の組成との対応を把握する。これらの解析によって、それぞれの土壌試料が包含する微生物系統や機能の複雑性を明らかにし、微生物がどのように多様な土壌環境に適応しているのか、その実態を解明する。


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