| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S09-2  (Presentation in Symposium)

緑葉の光利用と光化学系IIの光阻害
Light use and photoinhibition in green leaves

*寺島一郎(東京大学)
*Ichiro TERASHIMA(The Univ. of Tokyo)

太陽光を効率よく吸収するためには黒い葉を作るのが理想的である。しかし、それは光のエネルギーが効率よく化学エネルギーに変換できる場合に限る。Calvin-Benson-Bassham経路のCO2固定酵素Rubiscoは、大きな酵素なのに反応速度が遅い。したがって、太陽光の強いエネルギーを光合成に利用するとき、葉は大量のRubiscoを持たなければならない。葉のタンパク質の1/3程度が Rubiscoとなるほどである。また、RubiscoはCO2に対する親和性が低いので、エネルギーを大量消費する光呼吸の出発点となり、CO2固定反応と競争的におこるO2固定反応を抑えるためには、葉緑体はCO2濃度の高い細胞間隙に沿って配置されなければならない。細胞間隙に接する葉肉細胞の表面積を大きく保つためには葉は厚くなる。葉は、なるべく多くの光を吸収するとともに、光を全ての葉緑体に分配しなければならない。このような状況下、吸収されにくいからこそ葉の奥まで潜り込める緑色光が重要な役割を果たす。この緑色光の効果を評価しようと、微分的量子収率測定法(2009)を開発した。通常の光合成作用スペクトルの測定では弱い単色光を使い、その光量子束密度の増加に伴う光合成速度の増加を評価する。一方、微分法では、白色光で光合成速度を高めておいて単色光を照射する。こうして白色光照射中の緑色光の量子収率を評価することができた。緑色光は光合成におおいに役立つのである。
 光合成に光は必須だが、強すぎる光は光化学系に光阻害をもたらす。光化学系IIは特に傷みやすい。この阻害機構について、最初に水分解系が傷むという説と、光化学系IIの電子受容体QA還元活性が傷むという2説がある。光化学系IIの電子伝達阻害剤であるDCMUを用いてこれらの分別定量をする方法を開発し(2022)、生態学的条件下では後者の機構が重要であることを示した。


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