| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W01-3  (Workshop)

島嶼の送粉者相と花形質の進化
The pollinator fauna and floral trait evolution on islands

*平岩将良(近畿大学), 阿部晴恵(新大佐渡セ), 丑丸敦史(神戸大学)
*Masayoshi HIRAIWA(Kindai Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

海洋島では、大陸や大陸島から移入・定着できた生物のみが群集を構成し、もっぱら大陸・大陸島とは異なる種間関係が構築される。送粉共生系はその好例である。一般的には海洋島の送粉者は大陸と比較して種数が少ないことが知られている。また、送粉者相も大陸とは大きく異なり、海洋島では大型ハナバチ類やチョウ類は低頻度にしかみられず、小型のハナバチ類が優占すると報告されている。このような送粉者相の変化によって、大陸において大型ハナバチ類やチョウ類に依存していた植物に、小型ハナバチ類やスズメガ類など他の送粉者が訪花し、花形質の進化が起こるとされてきた。一般的に海洋島の花は「目立たない色」、「小型」、「花蜜・花粉など報酬にアクセスしやすい」という特徴をもつといわれている。このような島嶼の花形質が共通でもつ特徴はアイランドシンドロームとよばれ、古くから研究が行われてきた。例えば、本州でマルハナバチに送粉されるホタルブクロは、マルハナバチが不在の伊豆諸島では花が小型化し、小型のハナバチによって送粉されていることが知られている。
本発表では、島嶼の送粉者相がもつ特徴について先行研究を整理し、発表者らの伊豆諸島のデータと併せて、島嶼においてどのような種群の送粉者が優占するのか考察を行う。次に、島嶼の送粉者相の特徴と関係してどのように花形質が進化するのかについて先行研究の整理を行い、伊豆諸島と佐渡のデータと併せて、島嶼の送粉者相の変化が花形質に与える影響がどこまで一般化できるのかについて検証を行う。また、「目立たない色」、「小型」、「報酬にアクセスしやすい」という特徴以外の花のアイランドシンドロームの可能性について議論を行う。


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